期待はずれだった『残響のテロル』

現在進行中の権力の動きに対する危機感を反映したテーマはいいと思うのですが、ドラマ性とメインキャラ描写の薄さや、全体の構成のバランスの悪さが目立ち、何より社会派エンターテイメントとして面白味に欠けると感じました。

最初は学園ものとして進みつつ、その中でテロを起こしていくのかなと思っていたのですが、学園描写もそこそこにいきなりテロを起こし、そこからはほぼアジトでの主人公視点と刑事視点メインなので、全然テロが際立たない!そもそも学校に転入する必要なかったじゃん!という。

それでも、リサが第三者視点としてうまく機能していくんだろうなと思っていたら、稀にみる、なすがままの巻き込まれ型ヒロインで、多少話を盛り上げる為の単なる賑やかし役という感じが強く、物語やテーマにおいて不可欠な役割を持ったとは言い難いところがあります。成長したことはしたのでしょうが、母親との関係も学校でのふるまいの変化も描かない中途半端さ。


次はハイヴについて。いきなりの第二ヒロイン化は気が利いていていいなと思ったのですが、やはり唐突で、圧倒的に描写不足だから、うまく入り込めないという欠点があります。こっちを正ヒロインにして、丁寧に感情を見せる構成にすべきでした。
また、ハイヴは性格と行動が他のキャラと比べて一人だけ浮いてしまっていて、なかなかついていけないところがありました。逆に言えば、主人公側が平凡的すぎるという面もありますが、とにかくリアリティバランスが悪いということです。
個人的には、ハイヴをアメリカ政府側に置くのではなく、単独の存在として物語に絡めた方が面白くなったんじゃないかと思います。


次は刑事側。こちらは刑事ドラマでおなじみ的なキャラが多く、中でも六笠は脇役ながら存在感があり一番親しみを持てました。捜査描写はもっとテンポがいい方がよくて、たいした障害もなく真相に迫り、最終的に公表に至るのもあっさりしすぎていて緊迫感に欠けます。

あと、最終回で柴崎が、スピンクスは目的や伝えたいことがあるからただのテロリストではないと言ったのは、かなりの謎論理でした。


核となるアテネ計画について。まず、描写が薄く語りだけで説明しちゃっているのが残念で、やはり丸々一話ぐらい回想に費やして欲しかったというのが一点。

そして、サヴァン症候群に似た状態を作り出すという、その設定が全然生かされていないというのが一番の欠点で、記憶力の良さなど披露されるものの、行動含めて天才的とまでは言えず、地味すぎます。サヴァン症候群というのを出すからには、副作用として実際に障害が発症してしまうというものを加えるべきでした。コンビものということでは、一方はまだ実験前に逃走したということにして、互いを補完しあいながら協力して計画を進めるという内容にした方が、より二人の関係の強さも引き立つはずです。