白と黒が面白い

先週から始まった昼ドラ「白と黒」がメディアではなかなか描きにくい、描くのが難しいテーマに挑戦しようとしていて、とても興味深く見ています。

概要は公式HPかウィキペディアを見ていただければ分かると思うので書きませんが、この作品のテーマはタイトルが示すとおり「善と悪」です。


ざっくり分けるとと桐生家の父・和臣とその長男・章吾、礼子の親友の一葉が「善」で、桐生家の次男・聖人が「悪」、その間で揺れ動いているのが礼子。という構図になっていて、善の側の人間は一見すごくいい人、素晴らしい人のように描かれるんですが、その矛盾も同時に描かれていて単純な二項対立にはなっていません。


父の場合は、聖人にちゃんとしてもらいたいというような態度を示しているが、聖人を頭から否定し、全く歩み寄ろうせず突き放すという、その姿勢。
兄・章吾の場合は、自分は何でも許せる心の広い人間でありたいと言い、4年ぶりに突然帰ってきた聖人を快く受け入れるんですが、弟が問題を起こすと、怒りが爆発して全く相手の言い分を聞かず、罵詈雑言を言ったり、実力差がはっきりしているフェンシングでこてんぱんにやっつけるというような暴力を振るう不寛容な行動。
これは、自分は素晴らしい人間で、そのようにならない聖人は悪なのだ。と言う考えの表れで、自分達が思い描いている人間にならなければ聖人を一人間として認めないという姿勢が示されています。逆に聖人のほうが、そんな2人に寛容な態度を取っているようにも見えて、単純に悪だとは言えません。


もう一人の「善」の側にいる一葉はちょっと事情が違っていて、事故の時の行動以外、一貫して純然たる善人の振る舞いをしており、何も問題がない、いい人として描かれており、こういった人間をどういった側面から捉えるかというのが今後の注目です。



最後に、何が本当なのか、親友を疑う自分は間違っているのではないかと悩む礼子に対し、聖人が言ったセリフを紹介。これがこの作品のやりたい事を明確に示しているのではないかと思われます。

人間とは不思議な生き物だ。一つの体に神と悪魔が同居している。
もっとも、大方の人間は自分の中の悪魔を認めようとしねえけど。
たとえ自分の中の悪魔の顔を見たとしても、見なかったふりをして生きるんだよ。
私は善人です。欲望や嫉妬や殺意とは無縁の人間ですってね。