ネットでの口蹄疫に関する国の対応批判や噂についてのQ&A

私は専門家ではないので、間違っている部分等があれば指摘して頂くと助かります。

  • Q:民主政権が韓国の豚肉の輸入解禁をしたから、今回の事態が起きた?

下記のブログがこのことについて詳細にまとめていらっしゃるので、そちらをご参照ください。

口蹄疫 韓国と中国の情報について 追記あり - 食の安全情報blog

また、今年1月に韓国で口蹄疫が発生したウイルスのタイプはA型です。(今回はO型)

http://ss.niah.affrc.go.jp/disease/FMD/korea_2010.html

  • Q:こんな時に赤松農水大臣が外遊してていいの?

法律では、特定家畜伝染病防疫指針に基づき自治体が対策するよう定めています。

5月11日追記:wakatono様の指摘を受けて訂正。農林水産大臣代理は福島みずほさんだけだったようです。

また、外遊の際には、臨時代理が任命され、代理が農水大臣の職務を代行することになります。今回、臨時大臣に任命されたのは、7日閣議概要によると、福島みずほ特命担当大臣だったようです。

原口大臣はtwitterで2日前に、口蹄疫対策に関する呟きをしています。以下引用。

ありがとうございます。後手ではありません。発生後、すぐ私は指示をしています。風評被害が大きくなれば、さらに大きな被害となります。畜産と言う産業の性質上の問題もご考慮ください。(自民党支持者の批判に対しての返事)

  • Q:農水大臣の役割はどうなっているの?

法律では、重大な被害が恐れがある場合、大臣自ら指示できると記してありますが、義務とは書いてありません。防疫指針では「移動の制限等の規制は、法第32条第1項、第33条及び第34条の規定に基づき、都道府県知事が規則を定めて行うことを原則とするが、制限が広範囲の地域に及ぶ場合等必要があるときは、農林水産大臣都道府県知事に対し、これらの規制措置を実施すべき旨を指示し、又は法第32条第2項の規定に基づき、自ら区域を指定し、家畜及びその死体等の移動を制限する。」と書かれています。

国、自治体、畜産業者自身等のそれぞれの役割については「家畜伝染病予防法」と「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」、「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針に基づく発生予防及びまん延防止措置の実施にあたっての留意事項」を参照してください。

  • Q:国は全く対応していない?

法律で定められた最低限の対策はしているはずですが、国、自治体、畜産業者自身等の対応を今後しっかり検証されるべきです。公式発表のものですが、農水省防衛省の対応について、関連URLを貼っておきます。

コメント欄よりモーモー様の指摘を受けて追記:自衛隊派遣は5月1日に宮崎県知事からの要請を受けて行なわれたものです。

http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_fmd/index.html

宮崎県において発生した口蹄疫への対応に係る災害派遣について(防衛省

http://www.mod.go.jp/j/press/news/index.html

  • Q:国の初動対応が遅れたからここまで被害が大きくなった?

国の対応について、問題がある部分があれば指摘されて今後に生かされるべきですが、前述の通り、法律で基本的に自治体が対策をするよう定めているので、まず自治体の対応が重要になります。なので、国だけでなく県の対応も検証される必要があります。

時間があれば、00年のケースと今回のケースとの対応の違いを詳細に調べてまとめたいと思います。

一つだけ気になる事を書いておくと、00年の口蹄疫ウイルスは非定型的で、空気感染の可能性が低い上、従来のウイルスと比べて感染力が極めて弱かったので、幸い被害が少なかったという面があるらしく、単純に比較できない部分があると思います。以下、00年の口蹄疫に関する資料。

http://www.niah.affrc.go.jp/disease/FMD/taiou.html

http://www.sat.affrc.go.jp/special_pgm/FMD_Japan_review.htm

また、東国原宮崎県知事は、「家畜伝染病予防法」及び「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」に問題があるのではないかとして、見直しを求めています。

  • Q:不都合な情報を隠すために報道規制がされているのでは?

表向きには報道規制されているという事実はないはずです。上記で紹介した原口大臣の呟きから、「原口大臣が報道規制をしたことを認めた」と一部で受け止められていますが、真偽は定かではありません。

5月11日追記:原口大臣が本日ツイッターで、報道規制をしているというような事実はありませんと呟いています。

http://twitter.com/kharaguchi/status/13749873726


報道が少ない理由として一つ考えられるのは、人が感染を広めることから、報道関係の方々に対し、「現場での取材は厳に慎むようにしてください」と、協力をお願いされていることが考えられます。

ネット配信のニュースでは公式発表を元に逐一報道されているように思いますが、映像が無いことからテレビでは報道されにくい面があるのかもしれません。僕が本日見たテレビでは、宮崎県提供の映像が使われていました。

  • Q:消毒剤を韓国に全部あげちゃったから国の備蓄は無い?

農林水産省勤務の原田英男さんのツイッターによると、「国が消毒薬を保有している(た)ことも何処の国であれ譲渡したこともない。」ということです。

http://twitter.com/hideoharada/status/13508968579

kyu様の情報提供を受けて追記:4月22日の農林水産政策会議の概要によると、日本にあるビルコンSについては、韓国が買い占めた可能性が高いとあります。

http://www.maff.go.jp/j/kanbo/kihyo01/seisaku_kaigi/pdf/100422_gaiyo.pdf

5月13日追記:消毒剤については、Togetter - まとめ「小沢の口蹄疫消毒薬横流し」と口コミの怖さによくまとまっています。

  • Q:中央畜産会が事業仕分けされたせいで、対策のお金が出ない?

中央畜産会の基金でカットされたのは、「産業動物獣医師修学資金基金」と「畜産特別資金融通事業基金」だけで、疾病対策に関する、家畜疾病経営維持資金融通事業や家畜防疫互助基金造成等支援事業は仕分けされていません。

  • Q:韓国が3月〜4月に口蹄疫の再発があったときのウイルスが、宮崎県のO型株と同じだと思いますが?再発のウイルスの型をを意図的に隠してませんか?

コメント欄の日本人様の投稿に対しての返答です。

1つ目のQで紹介させて頂いたブログに詳しく書いてあるのですが、輸入は1月の時点で停止されており、関係は薄いだろうということで触れませんでした。日本人様が仰るとおり、韓国、台湾で今発症しているものはO型です。

  • Q:中央畜産会の仕分けについてコメント欄にてモーモー様の指摘の返答

勘違いされている方も多いようなのですが、「畜産特別資金融通事業基金」と「産業動物獣医師修学資金基金」は事業仕分け第一弾で仕分けされました。

そして、「22年度所要額を除き、農畜産業振興機構へ返納すべき」という結論がでて、実際には「21年度基金残額を独立行政法人農畜産業振興機構に返納。22年度所要額は別途措置」となりました。別途措置が実際どう図られているものなのか調べてもよく分からなかったのですが、事業自体を廃止しているわけではないので、特別に大きな影響は無いように思えます。

また、「畜産特別資金融通事業基金」と「産業動物獣医師修学資金基金」は、今回問題にしている、対策における資金の話と密接に関わりのないものなので、別問題として捉えるべきものと考えます。

  • Q:モーモー様の3つ目のコメントに対する返答

4月27日には赤松農水相に援助の要請を行っています。この時点で7例目までの発症が確認されており、牛よりはるかに感染力の強い豚も殺傷対象となり、殺傷数自体においても過去最悪となっています。

豚が疑似患畜と判断がされたのは、28日ですね。

また、27日の宮崎県知事の要請を受け、赤松大臣は第2回口蹄疫防疫対策本部を開催し、隣接県全域での全額国庫負担による消毒薬散布、発生農場における迅速な殺処分等の防疫措置を支援する獣医師などの増員等を決定しています。

しかし、モーモー様が仰るとおり、「家畜防疫を総合的に推進するための指針」がしっかり生かされていないことは事実としてあるのではないかと思っています。

  • Q:モーモー様の4つ目のコメントに対する返答

「消毒剤を韓国に全部あげちゃったから国の備蓄は無い?」では、関係者と思われる、法的権限の無い立場の、個人の呟きを根拠とされていますね?これでは、持論に都合の良い、ダブルスタンダードではありませんか?

「消毒剤を韓国に全部あげちゃったから国の備蓄は無い」という事実を示す資料が見つからなかったので、原田さんの呟きを参照にして、原田さんはこう仰っていますということを紹介したまでです。鵜呑みしているわけではありませんので、何かそういった事実を示す資料があれば、どなたか提示していただけると助かります。

  • Q:Sigmaさんのコメントに対する返答

私も00年のケースについて特別詳しいというわけではないので、申し訳ありませんが、Sigmaさんの疑問には現時点ではお答えする事は出来ません。原田英男さんのつぶやきによると、かなりひどかったらしいですが。

  • Q:totoさんのコメントに対する返答

私は、事実を書いたまでで、だから問題ないというつもりで申し上げたわけではありません。

  • Q:日本の畜産業がこのままでは全滅?

予断は許されない状況ですが、現在のところ1例目の搬出制限区域内での感染に留まっています。えびの市では、13日以降、擬似患畜の確認はされていません。発生箇所をまとめている、Googleマップを紹介します。

http://maps.google.co.jp/maps/ms?cd=2&ie=UTF8&oe=UTF8&msa=0&msid=103101097783275073929.000485d8ff7f0abb64dbf

コメント欄のカーバンクル様への返答です。

事業仕分け第2弾で農畜産業振興機構が仕分けされています。その中の「事業番号A-17-(3)」の事業目標及び計画の欄に「口蹄疫等悪性伝染病発生時等に、畜産物に係る知識の普及及び安全性のPRを行うとともに、畜産農家及び畜産関係者への影響緩和対策等の実施。」と記載があります。

仕分けの結論は「プール資金のあり方を見直し、緊急性のある事業以外は国直轄で実施することも含め、事業を整理・縮減」でした。

現段階では分かる事はこれだけで、ついこの間の仕分けの結果がもう反映されているのか分かりませんし、具体的に緊急性のある事業とは何か、国直轄で実施する事業は何かも分かりません。以上から、仕分けにより今回の対策において何か大きな影響があったとは断定できないと考えます。

  • Q:hirame様の1つ目のコメントに対する返答

法律では大臣は都道府県知事の要請を受け、現場に指示を出せると書いてあります。この要請は4月末に既に東知事が上京し行われました。つまりこの時点で大臣は指示を出せる立場に居たと同時に、被害拡大を防ぐ任に法律的にも着いたと解釈できます。しかしその後の顛末はご存知の通りです。

モーモー様の3つ目のコメントに対する返答にも書きましたが、一応、知事の要請を受け、大臣は翌日に「第2回口蹄疫防疫対策本部」を開催し、追加支援を決定しております。

  • Q:00年の時の自民党の対応は素晴らしかった?

hirame様の全体のコメントに関連して。

前回の2000年のケース。この際は迅速に予算の執行があり100億円が用意され(実際に使われたのは36億円程度のようですが)この効果ですばやく薬剤や消毒液が手配されたこともあり国が薬剤や消毒液を保持する義務は無いにせよ、それと同等の対応が行われた、ということだと思われます。

100億円というのは、4/27に対策が決定した130億円のことですね。これは感染疑いが発表されてから1ヵ月後に決定したものなので特別に迅速とは言えないのではないかと思いますし、実際の現地のまん延防止対策とはあまり関連性がないと思われます。

また、手当金や国の費用の負担は法律で一定額定められており、中には00年の発生以降に改正や追加されたものもあります。

比較する場合、何か一つの側面だけを持って「自民党の対応は良かった、民主党は駄目だった」と断定は出来ません。様々な面から比較検証をする必要があります。ウイルスの性質の違いも含め、発生以後改正されたり追加された法律等があることから、単純に00年のケースとは比較できないのではないかと思いますし、そもそも比較することにそこまで意味があるのかということも考えなければいけないと思います。

00年のケースについては、この資料にある程度詳しく書かれていますが、ここでは被害が少なく済んだのは、

防疫基本方針は守られたと考られ,ウイルスの伝播力が弱いという非定型的発生であったからこそ,その範囲が必要最小に抑えられたのであろう。

としています。

  • Q:埋却が進んでいないのは何故?

まず、死体の処理に関する法律、指針を見ていきます。

家畜伝染病予防法第21条より

1 次に掲げる患畜又は疑似患畜の死体の所有者は、家畜防疫員が農林水産省令で定める基準に基づいてする指示に従い、遅滞なく、当該死体を焼却し、又は埋却しなければならない。ただし、病性鑑定又は学術研究の用に供するため都道府県知事の許可を受けた場合その他政令で定める場合は、この限りでない。

(指定の病名省略)

2 前項の死体は、同項ただし書の場合を除き、同項の指示があるまでは、当該死体を焼却し、又は埋却してはならない。

3 第1項の規定により焼却し、又は埋却しなければならない死体は、家畜防疫員の許可を受けなければ、他の場所に移し、損傷し、又は解体してはならない。

4 家畜防疫員は、第1項ただし書の場合を除き、家畜伝染病のまん延を防止するため緊急の必要があるときは、同項の患畜又は疑似患畜の死体について、同項の指示に代えて、自らこれを焼却し、又は埋却することができる。

口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針、3.発生地における防疫措置 より

(4) 死体の処理
 ア 法第21条の規定に基づき、家畜防疫員の指示の下、原則として、発生地又はその付近において焼却又は埋却を行う。

 イ アの用地の確保が困難な場合には、原則として、と殺後、適当な焼却場所若しくは埋却場所までコンテナ車両を用いるか、不浸透性のシートで包み運搬して処理するか、又は十分な処理能力を有する化製場において化製する(ただし、化製の対象は、疑似患畜の死体に限る。)。

 ウ 運搬に当たっては、次の点に留意する。
   (ア) 積込み前後に車両表面全体の消毒を行う。
   (イ) コンテナ車両がない場合は、床及び側面を1枚のシートで覆い、更に死体積載後、上部もシートで覆う。
   (ウ) 車両には、消毒液を搭載するとともに、死体を処理する場所まで家畜防疫員が同行する。
   (エ) 運搬後は、車両及び資材を(6)に準じて直ちに消毒、焼却又は埋却を行う。

 エ 焼却又は埋却をする場所の選定に当たっては、所有者及び関係者と事前に十分協議する。埋却の場合は、地質、地下水の高低、水源との関係、臭気対策等を関係機関と協議する。焼却の場合は、火災予防に留意し、消防署等と協議する。

 オ 埋却する場合は、家畜伝染病予防法施行規則(昭和26年農林省令第35号。以下「規則」という。)別表第2の基準により行う。

 カ 焼却する場合は、規則別表第2の基準により行う。

 キ 化製する場合は、運搬車両から原料搬入口までシートを敷き詰める、原料置場と製品置場とを隔てて設置する等により汚染が最小限となるよう留意し、消毒実施状況を確認するため、設備及び資材の消毒が終了するまでの間、家畜防疫員が立会いを行う。

家畜防疫を総合的に推進するための指針、(3)緊急措置の実施体制の整備 より

カ 死体等の処理体制の整備
 (ア) 家畜所有者は、死体及び汚染物品の焼埋却等が速やかに実施できるよう、その処理方策の検討及び死体等の焼埋却場所等の確保に努める。
 (イ) 県政び市町村は、関係機関及び関係団体と連携して、家畜伝染病の集団発生等により多数の死体及び汚染物品が生じる場合を想定し、焼却、埋却及び化製処理が可能な施設のリストアップ、発生時の相談窓口の確認及び事前説明並びに関係団体等が行う死体等の運搬及び処理体制の整備についての指導・推進に努める。


簡単に要約すると、基本的には家畜所有者が埋める場所の確保するよう努めることになっており、原則として、発生地又はその付近において家畜所有者が焼却又は埋却を行うということです。しかし、そういう土地を持っていない農家もいる上、焼埋却できる場所についての規定も色々とあることで、なかなか土地が確保できずどうにもならない状況が続いているようです。