「子どもの幸福度世界一・オランダの秘密」 福祉ネットワーク まとめ

http://www.nhk.or.jp/heart-net/fnet/info/1001/100113.html

  • 授業のやり方

一つの授業で算数と国語を教える。どちらをやるかは子どもが決める。授業の内容を理解している子どもは、別のことをやってもいい。

一週間の時間割は決まっているが、どの科目をどの曜日にどのように勉強するかを決める事ができる。自分の理解や興味にあわせて学べる。

教師の話

「自分がやりたいように勉強すればいいんですよ」と、子どもたちに言えば、「自分のことを分かってくれているんだ」、「やりたいことをやればいいんだ」となります。そうすると、積極的に勉強するようになります。子ども自身が気持ちよく学ぶことが出来れば、自然に力がついてくるのです。

12歳のロイスさんは、6年生の勉強が難しいと感じ、留年を決めた。

ロイスさんの話

このまま進めば、試験も難しいし、色々なテストもあるし、自分でもいい決断だったと思うわ。

ロイスさんの母親の話

娘にとって何が大切なのか、それが重要なのです。以前は、学校から帰ってきても、何も話してはくれませんでした。でも、最近は自分のことを話してくれるようになったので、良かったです。

留年で自信が持てるようになり、引け目を感じる事はなく、周りも自然に受け入れています。

子どもたちが自分自身の納得できるやり方を選べる。それがオランダの学校では保障されている。背景には、子どもの幸せに繋がる、ある考え方が流れている。

教師の話

自分がやることを自分で選べる子どもたちは、オートノミー=自律の感覚を身に付けることが出来るのです。この感覚が凄く大切なのです。なぜなら、子どもたちが社会性を身につけられるからです。そして何よりも、子どもたちがより幸せに、より楽しく感じるようになるのです。

武蔵野大学教授・武田信子さんの話

学校や学級によって多少は違うんですけども、基本的にどの授業をどういう風に選ぶというトレーニングが小さい頃からなされているクラスが多いです。一週間でやる内容は、ある程度先生が決めていて、その一週間の中で、どういう順番でどういう進め方をして、どこで休憩をするかを自分で決めていいということです。誰かに言われて、それを仕方なくやって、つまらなさそうに、眠いのにボーっと聞いているということじゃなくて、自分で決めたことですから、それを責任を持ってやらなくちゃいけない。すると、勉強の内容が自分の頭に入りやすくなっていくということになるわけです。授業中に、分からない子は分かっている子に聞いてもいいし、開放的なことをやりたい子は、外に出て勉強したりとか、そこまで自由度が高い学校もあります。

完全に自由にしてしまうと、子どもは遊んだり、どっか行ったりするんじゃないかと思いがちなんですが、きっちりと小さい頃から自分でトレーニングをして、大人がそれを見守っているわけです。その子が失敗をするということになったら、その相談にのれるという体制にあるわけです。失敗して、やり直すという事を積み重ねていくと、段々自分で自分の生活を決めていくとか、自分の時間は自分がコントロールするものだとか、自分で選択して社会を作っていくという風に、一人の市民として、成人として育っていく道が出来ていくと、オランダの人たちは考えています。

自律というのは、自由とか自分で立ってという意味じゃなくて、自分で規則や決まりを作って、それを守りながら選択して生きていく、そういう力ですね。

Q:何故、日本では自律という考え方が根付かないのか?

そういう考え方を持っている人というのは多いと思うんですが、全くトレーニングなしに放り出してしまったら、恐らく子ども達は戸惑ってしまって、大人に助けを求めると思います。オランダでは、小さい頃から少しずつ慣らしていく、そして大人も自分で自分の人生を選んでいるという生き方をしている人がいて、それを見て、自分で選んで良いんだとなるような背景があるわけです。

  • 親と過ごす時間が長い

ウィム一家の場合。
夫婦がパートタイム社員として週四日働いてて、休みの日をずらし、交互に子どもの面倒を見ている。週2日は学童保育に預けるが、必ず18時に帰宅、家族揃って夕食を食べる。

パートタイムで働けるのは、法律の支えがあるから。96年に、フルタイムで働く人も、パートタイムの人も時間当たりの賃金が同じになりました。今では、社会保障も含め、全く同じ待遇。そのため、親は仕事と家庭のバランスを考えながら、安心して働き方を選べる。

ウィム夫の話

パートを選んだのは、育児をするためです。妻も仕事を続けたかったし。もちろん、働く時間が少ないので給料も減りますし、子どもを他の人に見てもらって、フルタイムで働けばキャリアを築くことが出来るでしょう。でも、それは選択の問題です。私にとって、プレイベートと家族は仕事よりも大切なのです。

一緒にいることで、子どもたちのことがより理解できるようになります。家にいなければ、子どもに何かあっても感じ取ることが出来ません。

オランダの若者支援の専門家、カロリン・ヴィンクさんの話

他の国と比べ、オランダでは子どもに多くの投資がされているわけではありません。つまり、家族への投資は少ないのです。しかし政府は、両親がどのように仕事と家庭をどのように両立させるか、その選択肢を増やす事に力を注いできました。オランダ政府としては、こうした条件を整えることが子どもの幸せに繋がるのだと考えているんだと思います。

武田信子さんの話

オランダは、とても家族を大事にする国民性があるんです。オランダの人に、「日本のお父さん達は、夜遅くに帰って来る人が多いんですよ」というお話をしたら、とってもびっくりされて、「夜遅くに帰ってきたら、子どもたちに会えない。なのに、子どもを持っているのは、どうしてなの?」という風に言われました。

何が自分の人生にとって大事か。先ほど、仕事より家族が大事だという話がありましたが、皆さんはっきりと意見として持っていらっしゃるんですね。もちろん、たくさん働きたい人は、働いてもいいんです。それは自分がどういう風に生きたいかを自分で考えて選択しているわけですね。

(司会)

これは不況の時に働き方をどうするかという議論が起こって、出来たんですよね。

(武田)

オランダ人はとても議論が好きで、これはどうしたらいいだろうということになると、みんなで何度も議論をして、「こういう道がいいよね」と、一つ一つのことを決めていくという国民性があるんですよ。

働けないで困っている人もいるし、働きすぎて過労死してしまう人がいる。こうした状況があったときに、オランダの場合は、「じゃあ半分ずつ分け合って、皆で働けるように時間を分ければいいじゃないか」と決めたわけです。そういう決断が出来たというのが凄いところだと思います。

誰かのところに何かが凄く偏ってしまって、みんなで無理をしあっている。でも、みんなでもう少し分け合ったり、自分の持っているものを他の人に預けたり、助けてくれと言ったりという風に、みんなでやりくりをするということが出来たら、もう少し柔らかく生きていけることが出来ると思います。