ベーシックインカムを巡る議論 「Life政策審議会」文字起こし Part.4
http://www.tbsradio.jp/life/2009/08/2009816lifepart3.html
今月16日深夜にTBSラジオで放送された文化系トークラジオLifeの一部文字起こしの第4回。
(斎藤?)
樋口さんはどういう風な形で制度を組んでいけばいいと思いますか?(樋口)
所得保障というものはあるべきだと思うんですが、それはやっぱり失業者とか無業者に対するものであるべきであって、ベーシックインカムのように無条件でやるというのはちょっと賛成できない。結局、同じ事をする必要があると思って、例えば貧しい人はベーシックインカムだけでは生活できないはずで、そうすると別のケースワーク的なことが必要になるんじゃないか。それはもっとシンプルに考えると私達の社会は、社会関係をもっと再分配しないといけないということを考えていいんじゃないかと思うんです。
(斎藤?)
実際に今の段階だと、会社に所属するということが多くの日本人にとって社会・共同体への参加という形になっているわけで、一番典型的なのが「勤めあげる」という表現を未だに使いますよね。勤めあげることが正しい生き方なんだ。となってしまうと結構厳しい。例えば、社会的な関係のモデルを作っていく、提示していくという場合は「勤めあげ」形式のモデルを提示することはほとんど不可能になってきていると思います。大学、高校を卒業して会社に勤めて、定年までそこにいるというのが正しい日本人様で、職を転々とするというのはあまりいい意味で使いませんよね。
でも、一つの会社に長期勤めるというのはブルーカラーでは海外でも一般的なんですけど、ホワイトカラーにまでこれが浸透している国というのは珍しい。そういう風に、長期勤めるのが正しいとなると、流動しないのでそこに参入するチャンスが無くなる。更に言うと、そこから零れ落ちてしまったらアウトサイダーになってしまう。そうすると非常に社会が硬直的になる。
僕はあまり同じ組織にずっといることが得意じゃない方なのであれなんですけど、努力の方向というのは二通りあると思っていて、一つは人間関係をよくしていくというタイプの努力と、もう一つはがんがん仕事が出来るようにするタイプの努力。日本みたいに閉鎖的なコミュニティの中でずっと仕事をしていくと、効率する努力よりも、その和の中でうまくやっていこうという努力になると段々ぐだぐだ感が出てくる。
(鈴木)
つまり、ベーシックインカムで完全に自由になりなさいというのが問題だとしたら、そのパターナルなモデルを作っておくというのは有りだとして、そのパターナルなモデルというのが日本の場合、閉鎖的で雇用が流動してないもんだから、善いことをしようというより喧嘩しないようにしようという方向になっちゃう。そうすると、企業を成長させるというよりもお互いになぁなぁになるようになっちゃうよねということで、そうじゃないモデルを作らないといけないという話でしょ?
それは、樋口さんに伺いたいんですが、さっきウェルフェア・トゥ・ワークが出ましたけど、これは要するに福祉を受けるならば対価として職業訓練を受けろみたいな話だと思うんですけど、そこで新しい職業倫理みたいなのを組み込んでいくというのは駄目なんですか?
(飯田)
海外だとその辺はセットになっていて、産業を新しくしていって流動化を高めて、高めるからこそ転職も当たり前になって、職業訓練もバーターになって転職もしやすい状況がデフォルトとしてあるからいいけど、日本だと職業訓練しなさいとしてもその後が見えにくい。
(樋口)
それは流動性に基づいて職種が移動できるようになっていない。勤め上げるという形で一つの場所でレベルを上げていくという。
(鈴木)
その会社に入ったというだけで、ある仕事を選んだということになってないわけですね。
(樋口)
なので、難しいなと。ただ、枠としては雇用の話になってるんですけど、今の社会は企業の人間環境が中心になっていて、非正規をとってみると社会関係が乏しく見えるんですね。それは当たり前で非正規で働いているから職場の関係が弱いという。
(鈴木)
職場を中心にしないと社会に関わっていけないし、その職場っていうのがとっても閉鎖的だっていう。
(樋口)
ただ、そのときに考え方として幅を持たせる事は可能で、例えば求職者手当が出た時にオルタナティブとして社会活動的なことをオプションに入れるというのも考えられる。
(鈴木)
やっぱり社会参加の場を広げるということを大前提にして、その機会を社会保障と一緒に提供すると。それとは別に、そういう社会を拒否する権利としてのベーシックインカムみたいなものがあるという話はイメージとして分かりやすいような気はします。