キャシャーン Sins 総評

最後まで全然すっきりしない感じが良いですね。
生に向き合う為には、死も同時に向き合わなければならない。生の伝道師死のルナに対して、死の伝道師になることを決意したキャシャーンというメメント・モリ的なお話で、これは分かりやすいところですが、リンゴって結局なんだったの?という疑問点が一つ。

ここで一つ重要な手がかりになるのはレダのことで、レダは子供が生める唯一のロボット。リンゴは人間のように成長したけど、滅びの兆候があった。中間的な存在=ロボットから生まれた子供。ロボットから生まれた子供=レダの子供という図式が成り立つように思います。つまり、失敗したと思っていた生命の誕生が成功していて、それを何者かがカプセルに入れたというorレダを通してカプセルから生まれた?ということが考えられますが、そこら辺の事情がどうなっているのかは一切分かりません(笑)


リンゴの事はこれぐらいにして、最終回の感想。
傷付ける現実から逃れようとしたキャシャーンが、再び傷付ける存在へとなったのは救われないことですが、この決断が良くて。というのは僕は最後までキャシャーンが好きになれなくって、最初にルナに説教した当たりなんか特に嫌な感じがしていたんですが、キャシャーンがルナを倒し、リンゴと幸せに暮らすというような終わり方じゃなくて、始めて大切な存在の死を前にし、死に対する悲しみや不条理さを知り、ルナを肯定したうえで、しかし死も必要だと自ら死神の役割を選び、世界で最初の生きて死ぬ命を持ったロボットのリンゴの語りで締めくくるという、神話的な創造を思わせる終わり方にやられました。


全話通じて、とにかくレイアウトや戦闘シーンが端麗で格好よくて、1カット1カットが印象的でした。特に、死をもたらす存在ということが戦っている時の目の描写に良く表れていて、悪魔そのものという形相だったのが巧い描写だなと思いました。

不満点としては、少し展開がまだるっこかったのがあって、もう少し節目節目でもっとメリハリがあってもよかったんじゃないかと思うのと、この世界観では人間という存在が非常に宙ぶらりんになっていて、人間を物語の核の部分に入れるか、初めから人間は排除して完全なロボット神話としてやったほうがよかったんじゃないかなと思います。さらに言えば、キャシャーンである必要性もあまりなかったように思うんですが、そこら辺は大人の計算もあってしょうがないのかなと。