小沢一郎民主党代表の公設第1秘書逮捕についての情報まとめ 3

5日以降の主な事件報道の流れ

違法献金:東京地検の立件「自民党はない」と政府高官 - 毎日jp

二階氏側も聴取へ 西松に838万パー券 東京地検特捜部、規正法違反容疑 - 産経

特捜部、小沢氏の参考人聴取を検討 検察内には慎重論も - 朝日

小沢氏、地検の聴取「応じる」 進退「現時点では考えず」- 産経

続いてTBSラジオ「アクセス」では佐藤優さんがゲストで、この問題を語っていました。二木啓考さん、麻木久仁子さんとの議論を掲載します。

佐藤:率直に言って、マスコミが成長してきていると思う。鈴木宗男疑惑の時とか、ホリエモン事件の時と比べると両論併記的になっている。
ですから、小沢さんがこれだけの会見をやって、その内容というのが相当のページを割いて書かれるというところで、国民に対して双方の言い分を伝えておこうということで、私は今回のマスコミの報道ぶりというのは大分バランスが取れている。

自民党側の疑惑ついて

二木:二階派のパーティ券の838万円は返却をしますと、森喜朗さんも600万円を返却すると。

佐藤:しかし、なんでやましい事が無くて問題が無いんだったら返却するんでしょう。

二木:だから、おかしいんですよ。返却するって言ったって、どこに返却するんですか?という話。2つの政治団体はもう解散してるから返却する場所が無いわけですよ。このお金を西松建設に持っていけば、貰っていた事がばれちゃうわけで。


佐藤:実は、返却をするっていうのは、ちゃんとした物証になる。なんで返却をしようと思ったんですか?と聞かれるんですよ。

麻木:善意のお金だと思っていのが、実はそれはかっぱらってきたものだったことが分かったので返すという理屈は成り立たないんですか?

佐藤:それは無罪推定があるわけですから、そこのところで風評によってかっぱらってきたということを決めているというのはどうしてか?ということ。

麻木:裁判が行われてきちんと確定した段階で返す。

佐藤:その前の段階で返そうと思うのはどうなんですか?何故返そうと思ったのか?これは取調室に行ったらそういう話になっちゃう。
だから、捕まった時に返していると大変です。悪いと思ったから返したんでしょ?と。捕まらない分には問題が無いが、捕まった時には返してないほうがいいわけなんです。

国策捜査について

佐藤:国策捜査と言われているんですが、まず暫定的でもいいから定義しておかなくちゃいけない。

まず主体はどこか?今言っている国策捜査というのは、2つの国策捜査を混同しているんです。一つは政局捜査。要するに官邸が主導して時の権力に有利な方向に物事をやったと。実は、こういう国策捜査は無いです。日本の国では出来ない。それは検察官僚の論理をあまりに知らなさすぎる。検察官僚は宇宙で一番頭が良いのは自分達だと思ってますから、政治家なんぞの言う事は聞かない。しかも、支持率が10%前後の政権なんて鼻クソみたいなものと思ってますよ。それに対して、民主党の方は目クソぐらいだと思っている。

それで、国策捜査について僕に教えてくれたのが、私の取調べ検事です。「あなたを捕まえた理由は簡単。鈴木宗男に繋がる事件を作るため。これは国策捜査なんだから、戦っても無駄だよ。国策捜査というのは時代のけじめをつけるためにやるんだ。だから何か象徴的な事件というものを作るんだ。」と。「そんなこと言ったって、こっちからすりゃ引っ掛けられたようなもんで、冤罪みたいなもんだ。」と言ったら、「冤罪なんか作らない。考えてみてもくれ、あなたと鈴木宗男も含めて、ここの部屋に来る人は皆、歯車さえ回っていれば物凄く影響力を持って有力な人になったんだ。その歯車がちょっと狂った。その場合に、必ず無理をしてるから、そこに釣り針をちょこんと引っ掛けるんだ。それを引き上げたら、確実に事件にできるから。逮捕したら起訴はパッケージで、起訴したら有罪もパッケージ。こういう造りになっているからよく理解しておいた方が良い。」と説得されました。


麻木:今回のは時代の象徴になりえる事件ですか?

佐藤:なりますか?政治資金規正法違反なんていうのは、本当に旧来型ですよ。仮に言われてるような贈収賄が出てきたって、これも旧来型。鈴木宗男さんの事件の時というのは、田中角栄型政治の終焉ですよね。要するに、権力を金に替えるのはいかんのだ。という世論の中で、右肩上がりの時代じゃないと、改革の時代に反するという事だった。その後、もう一つ重要な国策捜査があった。堀江貴文さん、あと村上さん。そこのところっていうのは、稼ぐが勝ちだとか、金で買えないものはないと、こういう新自由主義的な風潮は許さないという時代の象徴性があったと思う。今回の件は時代を転換することにならないというのがまず一点。
それから、2点目。国策捜査というのは流儀があるんです。これはまずリークが先行すると。秘書を逮捕したからリークするなんていう国策捜査は無いですよ。事前にリークをする。そして、新聞、週刊誌、ワイドショーでたっぷりと熟成するんです。私の場合も新聞の名前を申し上げませんけど、それが2002年の3月2日にテルアビブの国際学会で私が不正に資金を出したということを言ったわけですね。それから、たっぷりと2ヶ月以上熟成させて、逮捕の前日にそこの新聞記者が来た。そしたら「あなたね。私達マスコミに対して黙ってるっていうのは、それはそれで一つの見識かもしれない。しかし、特捜相手にそれは通用しませんよ。黙秘はあなたにとって不利になります。心証悪くなりますよ。特捜に捕まったら正直にお話した方がいいですよ。」と記者が言うんです。その記者の目が、巨人の星星飛雄馬のように燃えてるんです。悪の権化を見ているような顔で。


麻木:そういう空気を熟成した上で、なんであんな悪い奴を捕まえないんだって満を持して、そこへ月光仮面のように現れて特捜が逮捕すると。


佐藤:今回はその手続きを踏んでいないですから。その2つの重要な点において、国策捜査の特徴を備えていないんです。

事件の今後について

佐藤:私は小沢さんは負けると思います。どうしてかと言うと、私は検察との闘いというのがどういうものかということを512泊してよく分かりましたから。これは勝てない。組織相手に喧嘩をすると。正しいか正しくないかは関係ない。それは向こうが決めた場合には絶対に勝てない。それから、彼らは星飛雄馬のように目が燃えてて、彼らなりの正義感を追及しているんです。彼らは本当に今の日本の状況を憂れいていますよ。正義感が強い連中です。それで、彼らは社会のゴールキーパーなんです。もっと悪い言い方をしたら社会の汚水処理場です。ところが今フォワード、政治がだらしないと。それだから、俺が直す!という感じでキーパーがフォワードに出てきてサッカーをやっている。手も使っているという状態なんですよ。


二木:これは暴走ですか?


佐藤:暴走です。明らかに。というのは、国民による最終的なチェックが何も無いから。小沢さんの責任の取り方は簡単で、次の選挙なんです。政治家の責任は選挙だけで取ればいいと僕は思う。そんなことを言ったってあいつから資格を奪うべきだという発想自体というものが官僚の発想なんです。


麻木:憂いているという善意から来ているからと言って暴走を許すと、選挙のチェックも何も効かない人たちを誰も歯止めを利かせることは出来ないぞと。


佐藤:そういうことです。1936年の2月26日にございました。世の中の事を憂いて正義感に燃えた人たちが決起したじゃないですか。それで日本の国よくなりました?


二木:私は金丸さんの逮捕の時って非常によく覚えてるんですが、5億円を佐川急便から貰ったという話があって、政治資金規正法で20万円の罰金だった。5億貰ってるのに20万かよとワーッとなって。これを政治が何も解決をしない時に、年が明けて、今度は地検特捜部が取るわけですよね。そうすると、金権腐敗の問題ってのは最後は検察がやってくれるんだという風な検察最終兵器論みたいなのがあった。今回の場合は民主主義を超えて検察がフォワードに出てきちゃったという感じなんですかね?


佐藤:私はそういう風に見てます。ですから、あと六ヶ月どうして待てないのかと。政権の側にいったらやらないということだったら、そんな検察いらないですよ。政権の側にいったてやれるっていうのが国民の検察に対する信頼を維持することじゃないですか。だから私は、検察の上が大丈夫かなぁと凄く心配してると思うんです。


佐藤:恐いのは、私は小沢さんがいいかとか自民党の方がいいかということに全然関心が無い。今回起きている危機っていうのは、検察は俺が直す!という形で来ている。しかも、卑怯だと思うんです。自分の官職氏名を名乗んないで情報を流しているから。小沢さんは正々堂々と国民の前に出てきて説明をしている。それはなんに対して釈明しているかというと、どこがニュースソースが分からないその筋の話について釈明していると思う。流す人は、私は東京特捜部のなんという検事ですと、ちゃんと言わないといけない。


麻木:アメリカだったら、ちゃんと検事は顔を出して、こういう嫌疑であると言うでしょう。


二木:そういうことで言うと、6日の朝日新聞に政府高官は首相官邸で記者団に対して「自民党側は立件できないと思う。特に違法性の認識の問題で出来ないだろう。」と語ったと出ていた。政府高官は検察のTOPじゃないんだから、なんでこんなこと決めちゃうのかと。


佐藤:そんなこと言うんだったらやってやろうじゃないかというのが、私が知っている特捜のメンタリティです。ですから、これは藪を突付きましたね。

〜中略

二木:先程佐藤さんが言った国策捜査の定義の2番目。がんがんリークをして、こんな悪い奴を何故捕まえないんだ!って熟成させてガチャンコかけるというのと、今回は違うと思うんですが。

佐藤:あれが正当派の国策捜査。ですから今回のは邪流の国策捜査なのか国策捜査じゃないのかどっちかなんです。

二木:今はそれが後先になってるのかなぁと思うのが、昨日の読売新聞の朝刊に大久保容疑者は、毎年西松建設にいくらよこせという請求書を送ってたというのがあったんだけど、午前中に検察が請求書はありません。と否定したというのがあって、そこまで現場が・・・

麻木:マッチポンプ

二木:いや、流してんだよ色々。ああでもないこうでもない、どうせ聞き得だからと、こうだよと言うわけです。

佐藤:私だって当時リークされたの全部合わせたら前科200犯ぐらいですよ。

麻木:民主党の対応として、小沢さんが言っている事を信じると言ったら、小沢教かと揶揄されちゃうんだけど、じゃあ検察がクロだと言ってるから信じると言うのも検察教だってことになるわけで、

佐藤:ここはこういう風になってるんです。第一条・検察は絶対正しい。第二条・それ以外の場合は第一条に順ずると。心配ないんです、そこは。そういう国に生まれてるんです我々は。

麻木:国民としてそう思っといたほうがいいの?

佐藤:思っといたほうが良いです。もし、捕まったら、反省するのはただ一度。悪かったと反省しなきゃいけないんです。悪かった、悪かった、運が悪かったと。ですから、狙われたらお終い!

堀江貴文さんが「徹底抗戦」という本を出したんですけど、そこにヤメケンビジネスっていうのがあるんじゃないかって、検察が事件を作って、OBが弁護をして取引をしてお金が動いていると。これは本当に「徹底抗戦」というタイトルに恥じない、彼自身の気合が入っている。経験者ですから、本当に説得力があります。それで、あるスポーツ新聞のインタビューで彼は「政治的背景があると思いますか?」という質問に対し、「いやぁ。そうじゃなくて、独りよがりの正義感を持っている人たちが拍手喝采を受けたいと思ってやってるんじゃないですか。」と言っていたんですが、これは鋭いところをついていると思います。


麻木:もっと拍手喝采を受けようと思ったら、自民党の方にも捜査のメスをこれから入れるということになってくるんですかね。

〜中略

・七艦隊発言と何か関係があるんじゃないかというリスナーの意見を受けて

佐藤:私の時も、外務省で取調べを受けた連中が連絡くれたんですけど、「北方領土問題なんか解決しないよ。そんなことはする必要がないんだ」というようなことを取調べの検察官が言っていたと。だから、そこのところでは本当に外交がわかんない低レベルナ発想というのは検察官僚は強いとそう思っています。ただ、私を取り調べた検事は、その辺は非常にフラットで、日露関係を勉強したいと、私の話を懸命に聞いていた。

〜中略

佐藤:民主党か検察かとか、自民党民主党かという問題ではもはやなくて、国民か官僚かという切り口です。政治家というのは最終的には国民の統制を受けているわけですから、選挙で落とす事が出来る。官僚は試験に合格して入ったら身分保障がずっとある。そういう人たちが、俺が直す!という感じでいいのか?ということです。