四畳半神話大系 総評

湯浅政明監督は、WEBアニメスタイルのイベントでのインタビューで「売れる作品を作りたい」というような事を語っていました。
http://www.style.fm/as/13_special/mini_interview/kaiba_event4.shtml


まだDVD、BDは発売しておらず、どれくらい売れるかは分かりませんが、ネットでの評判を見てみると、なかなかの好評のようで、監督の念願が叶ったであろうということについては目出度いことではあるんですが、「ケモノヅメ」、「カイバ」のような作品が好きな身としては、僕の見たい湯浅作品はこれではない!という感じで、あまり好きにはなれず。

結末と、教訓めいたポジティブな人生訓が早い段階で予想できてしまい、「まぁそうなるよね」という感想しか抱かなかったのと、パラレルワールドという設定もポジティブな人生訓にたどり着くための単なる装置にしかなっておらず、ちょっと反則的で、湯浅作品にある魅力的な世界観というものが無く、どうしても物足りなさを感じてしまいます。

全体の内容に関しては、基本的に「私」を中心とした固定メンバーの不毛なドタバタ劇がメインで、ほとんどパターン化されてしまっていたので飽きが来てしまったこともあり、また、物語の構造上仕方がない面もありますが、キャラの掘り下げが足りなくて、どこか記号的であり深みが無く、単なるキャラクターを超えた身体性が全く感じられません。また、見る人によって感じが方が違うと思いますが、不毛な生き方といっても、最後の「私」が気付くように、それぞれが彩りに溢れているもので、それなりに幸せな大学生活を送っているにも拘らず、うだうだと悩む主人公のみみっちさに共感する部分もあれば、少し怒りを覚える部分もありました。

細田監督の「時かけ」も似たような感想を持ったんですが、純度100%の「時かけ」よりも、鬱屈したものがあるこ「四畳半〜」の方が僕自身は好みではあるものの、この作品のキャラデや演出が、何の面白みも無いありきたりなものであったならば、途中で視聴を止めていたと思います。

最後に、人気作を作りたいという監督の願いは一応叶ったであろうに思うんですが、既に知名度、人気のある森見登美彦さんの原作であったから勝ち取れた面もあると思うので、次はオリジナルの「売れる作品」を目指して頂きたいなと思います。