BSディベート「子ども手当 5兆円は何をもたらすのか?」一部テキスト化 Part.1
http://www.nhk.or.jp/bsdebate/1003/theme.html
今月放送された、NHK-BS1「BSディベート」をテキスト化しました。
出演:井堀利宏、飯田泰之、川本裕子、ジャンヌ・ファニャニ
関連:http://d.hatena.ne.jp/benitomoro33/20091217/p2
- 所得制限はすべきか
(井堀)
私は、所得制限は設けるべきだと思います。何故かと言うと、子育てが大変な家庭というのは、所得が低く、経済的に貧しい家庭なわけで、子どもを社会全体で育てるとしてもそれぞれの家庭が責任を持って育てるわけですから、親の所得が少なければ当然、子どもは大変なわけですね。親の所得が高ければ、それだけ子どもは優雅な生活、子育てが出来ているわけですから、政策的に子どもにどれくらいお金が必要かは親の所得に依存しているわけですから、本当に子どもの経済状況が大変なところに手厚くする手当てをと。所得制限を付けて、所得の低い人ほど手厚くして、所得が増えるに従って給付額を減らして、ある程度の所得以上の人には給付しない。これが理想だと思います。
(川本)
私は、所得制限については反対です。やはり、子どもを社会で育てるという象徴的な意味合いを矮小化してしまう恐れがあるということなんです。もちろん、井堀さんが仰った事は経済学的にはそうだと思うんですけど、これは価値観の問題だと私は思っています。なので、子どもを育てるということが社会で評価されるということを目指していくべきなんじゃないかなと思います。
(井堀)
基本的には財源の問題が一つあります。もう一つは、親がきちんと子どもを育てるインセンティブをもたらすには働くとそれなりに所得が増えるという。要するに、一律にお金を配ると、それを親が無駄に使う可能性もあるわけです。
望ましいやり方というのは、給付金付き税額控除に子ども手当を取り込むということだと思うんです。これは先進国でやっているところがあって、課税最低限以下の所得の人にそのギャップに応じて還付すると。そうすると、課税最低限以下の所得の人がより多く子ども手当がもらえる。これにすると費用が安く済んで、本当に困っている人だけが手厚く手当をもらえるんですね。
(飯田)
私自身も川本さんが仰る価値観の問題であるというのは非常に分かります。また、実務的な理由で所得制限には反対なんです。システムがシンプルなほど運用が簡単で、所得制限を設けますと、どのラインするのか?または、一定以上の所得より上の人はゼロになってしまうというところでデザインが非常に難しくなるということが一つ。
もう一つは、毎年の収入所得というのがその人の裕福さ、生活の大変さを表すバロメーターで無くなっているかもしれない。例えば、年収300万円であるけれども実家が近く、かつその実家を相続できるというようなケースと、年収500万だけど家をローンを組んで買わなければいけないという層で相当生活の豊かさに違いが出るんです。所得制限で切ってしまうと、「家は生活が苦しいのに貰えない」とかいう混乱が出ますので、一律というのが正しいんじゃないかと思います。
(川本)
給付金付き税額控除には賛成です。ただ、それと子ども手当は分けて考えるべきだと思うんですね。フランスで子ども達を育てながら4年過ごした経験があるんですけども、日本の子育て支援というのはあまりにも子どもに対して優しくないんです。それを解決していく第一歩として大きな意義があると思うんです。
(飯田)
あとは、もし支出を抑えたいのであれば、第2子目以降というような、外形標準ではっきり分かる形の制限をいれていくという方法もありなんじゃないかと思います。