トラブル急増「債務整理ビジネス」 週刊ニュース新書特集一部テキスト化

今、借金を整理して払いすぎた金利貸金業者から取り戻す、過払い請求が急増している。その額は、1年でおよそ1兆円。手続きを代行する弁護士や司法書士らに特需をもたらしている。背景には、2006年にグレーゾーン金利を認めないとする最高裁判決がある。以降、貸金業者に対して、過払い分の返還請求が殺到。貸金業者が経営難に陥る一方で、法律事務所などは債務整理バブルに沸いている。そうした影響が思わぬ事態を招いている。

(全国クレジット・サラ金被害者連絡協会 本多事務局長の話)

金儲けのためだけに債務整理をやっているところが増えている。弁護士、司法書士による“2次被害”が発生している。

多重債務者の救済に取り組む、全国クレジット・サラ金被害者連絡協会には、債務整理の2次被害を訴える相談が急増している。

  • 関東に住む夫婦のケース

こちらの女性は、親の介護入院などをきっかけに、消費者金融から300万円を借り入れた。債務整理を依頼したのは4年前。都内の法律事務所の新聞広告を見て依頼した。

債務整理の結果、借金の総額が74万円になり、過払い金は203万円にのぼった。一方、法律事務所への報酬は109万円。通常、過払い金の20%が相場と言われる中、50%の請求だった。夫も過払い金の66%にあたる、47万円の報酬を請求されている。高すぎると申し出ると・・・

(女性の話)

ヤクザみたいでしたね。「そんだったら、警察に言えばいいだろ!訴えろよ、そんなら」と本当に言われたんです。

請け負った法律事務所に訪ねると、「担当者がいない。いても、個人情報なので答えられない」という返答。

  • 東北に住む男性のケース

男性は、東京の法律事務所の出張相談に参加。弁護士が「過払い金が100万くらいある。借金も弁護士報酬も全て過払い金で賄える。」と言ったので、男性は気をよくして書類にサインした。しかし、数ヵ月後に送られてきた債務整理の結果は、過払い金はおよそ75万円で、弁護士報酬はおよそ60万円。更にまだ16万円を返済しなければならないというものだった。書類が送られてくるまでの間、弁護士からの連絡は一切無かった。他にも完済したはずの借金が計上されていることを不満に思い、弁護士会に調停の申し立てをした。

請け負った弁護士に話を聞くと・・・

そういうことを仰ってくる方は1000分の1ですよ。「ありがとうございました」、「おかげで助かりました」って、1000分の999はみんなそうですよ。その方がいくら欲しいのかですよね。

  • トラブルの背景

こうした報酬を巡るトラブルの背景には、2003年以降、弁護士や司法書士の報酬が自由化されたことがある。

日弁連多重債務対策本部 宇都宮弁護士の話)

多重債務を処理するために弁護士や司法書士に依頼したのにもかかわらず、多重債務の状態がひどくなる。私は、報酬基準はきちっと決めて、ある一定以上は取れないようにするべきだと思います。

一方、他の弁護士からはこんな声も・・・

私達は困っている人を助けてあげている。経済的に大きな利益を得ているからといって、批判されるのは筋違いだ。債務者の7割が遊びで借金をしている。報酬を多く取るのは、まじめにやれというメッセージ。授業料と思ってもらいたい。