日銀総裁、白川方明氏がWBSに出演 一部文字起こし

昨日放送のWBSに、日銀総裁白川方明が出演。その発言を一部文字起こししました。

  • 今までのデフレ対策の評価は?

ゼロ金利政策、あるいは量的緩和政策は、いずれも極めて低い金利環境を作り出す事を通じて、個人や企業が資金を借り易い環境を作ったと思います。その面から、民間の経済活動をしっかり下支えしたと思っています。

特に、量的緩和政策は、金融機関に対して資金を潤沢に供給するという政策でしたけども、金融システムの安定を維持するという意味では、効果があったと思います。過去のデフレの歴史を振り返って見ますと、物価下落と景気悪化の悪循環、いわゆるデフレスパイラルが生じるケースは、大半が金融システムが不安になった、そういう時期です。

ただ、デフレの根本原因は、需要の不足です。設備投資や個人消費といったものが持続的に拡大していくということが必要ですし、そのためには短期的な需要喚起策、これはこれでもちろん必要ですけど、合わせて生産性が上昇していく、将来、所得が増えていくというような気持ちに人々がなるような状況に持っていくことが最も大事な政策だと思います。

  • 「超低金利」そのデメリットは?

金利は、預金金利の減収を通じて、デメリットがあるように思います。

ただ、銀行が高い金利を支払えるということは、逆に言いますと、銀行が高い金利を受け取っていないとこれが出来ないわけですから、その意味では、経済が成長し、経済活動の水準が高まっていく事を通じて、初めて金利も上がって来るんだと思います。そういう意味で、日本銀行としては、預金者の痛みというのは充分に理解し、意識しているんですけども、そのうえで経済活動の底上げを図っていくということを、まずは優先する必要があるかと思います。

Q:他方で、ゼロ金利や金融緩和政策というのは、海外との金利差を通じて、海外にお金が流れ出ていく、その意味では世界的に流動性をどんどん供給してしまうということも言われているし、そういう可能性があると思うんですが、そういう点で、弊害をもたらすということにはならないでしょうか?

確かに、経済が回復した後も低い金利を長く続ける、あるいはそういう状況が長く続くという予想が広がりますと、低い金利の通貨で資金を調達し、高金利の通過に投資をするという動きがひろまっていきます。

最近、国際会議に出ますと、新興国の代表の方から、現在のような低金利が長く続くと結局、自分たちの国に大量の自己資本が入ってくる、あるいは資産価格が上がる。そうした事で、経済が過熱するという懸念を表明する方が増えています。

私としては、先ほど指摘された事も充分意識する必要があると思っていますけど、同時に先進国の現状を考えますと、まずは低金利を維持し、経済をしっかりと支えるということを優先すべきだと思っています。

  • デフレ対策にどう取り組むのか?

日本銀行は、デフレから脱却し、物価安定の下での持続的な経済にできるだけ早く復帰するということが大事だと考えております。先週の金曜日の政策決定会合で、改めて物価安定の考え方を明確化し、「物価マイナスを許容せず」ということを明らかにしました。

問題は、どのような対策をするかということですが、一つは現在の実質ゼロ金利を粘り強く続けて、経済全体の需給バランスの改善を図っていくとういうことだと思います。それから、デフレスパイラルを防ぐために、流動性を潤沢に供給し、金融システムの安定をしっかり維持するということだと思います。

そのために必要と判断した場合には、迅速かつ果敢に行動するという体制を常に整えています。


Q:今後、景気が下振れした際の準備というのはされているんでしょうか?

どの中央銀行でもそうですが、金融政策の目的は、物価安定の下での持続的な経済の成長の実現です。中央銀行は、いつもこのことだけを考えているということです。

従って、先行きの政策についても、過去の日本銀行が取った様々な政策、あるいは現在、他の国が取っている色んな政策の効果などを参考にしながら、目的の達成の為に何が最適なのか常に検討は行なっています。


Q:量的緩和を採用されるというお考えはおありでしょうか?

あらかじめ特定の手段を年頭に置いたり、あるいはあらかじめ特定の政策を排除するということは、もちろんしていません。過去の様々な政策を点検したうえで、何が最適かというのをいつも考えていきたいと思っております。