アクセスに石破茂農林水産大臣出演

火曜日のTBSラジオ「アクセス」に石破茂農林水産大臣が出演して、未来の農業について語っていました。以下、ほぼ全文掲載。

事前情報

不在地主農地:20万ヘクタールに 農地法見直す方針

耕作放棄地が2005年で39万ヘクタール。

神門善久さんによると、優良な農地が違法、脱法で、住宅地や商業施設建設のために転売されているという指摘。非営農企業が仮登記やダミーの農業生産法人を作って農地を買い漁っている。許可を得ずに転用された農地が2007年までの3年間で2万4000件に。違反転用には罰金300万円が設けられているが、実際には反省文を書くだけで済んでしまっているのが現状。

2005年時点で、農家の数は285万戸で、その内、稲作農家が196万戸。これまでの5年間で45万戸減っていて、83年では383万戸で20年間で約半分になっている。

11日に失業者を就農させる取り組みに着手することを政府が発表。

コメの減反廃止を検討 石破農水相

宮崎哲弥氏の意見

宮崎:失業者を就農させると言っても、右から左に出来るわけではないし、農業従事者が少なくなったのにはそれなりの理由がある。
一言で言うと、「魅力がない」、「所得がない」ということ。どうやったら楽しげに見えるか、魅力を感じさせられるか、どう所得を保障できるかということだと思います。あとは、結婚が出来るとか、それなりの社会的プレステージが保障されるとか、大きなものじゃなくていいから、やってもいいかなと思う人が増えるように社会的プレステージを今の状況から逆転できるかどうかとか色んな事があると思うんです。

宮崎:結局、直には出来ないんだけど、いつまでも国の補助金に頼って、あるいは減反政策、わざと生産調整を行って造らない。造らない事によってお金が貰えるという様な、そんなことをいつまでも続けるべきか。
そういう構造を残したままで、消極的な面しかこの産業にないとするならば、農業には未来がない。

石破大臣登場

減反見直しを農水族と農協を敵に回してまでもやっていく覚悟はありますか?

石破:それは、なんのためにやってんですか?ということ。大臣であれ総理であれ、何かをやるための手段なんですね。それが目的じゃない。反対している人がいっぱいいるから止めましたなんて言ったら、そもそも大臣をやる資格なんかない。
もう一つは、私は減反を選択性にするって決めたわけでもないし、それを公に言った事もないんだけど、新聞で報じられますよね。週末は、色んな所に選挙のお手伝いに行くんですが、お前の言う事は間違いだと言う人に一人も会ったことがない。むしろ、お前の言うとおりだという人がなんて多いことか。

宮崎:それは本当に心強いことなんですけど、前に輸入穀物の値段が上がった時に、私はあるTVで、そろそろこういう状況も、世界的に食糧難というのがバックグラウンドとしてあるんだから、減反政策を長期的に見直していく必要があるんじゃないかという話をしたら、一杯投書が来ました。米作農家の現状をどう考えてるんだお前は!と。生産調整がなければ、とてもじゃないけど生き残れないと。大臣のもとにはそういう声は届いてないんですか?

石破:来ないですねぇ。だからさ、本当にお米で生計を立てているという人にとって、一番いい制度じゃなきゃいかんでしょう?そうすると、お米の値段が落ちるということを前提にして仰ってるみたいだけど、本当に落ちるだろうか?
私は32年生まれですけど、子供の頃、炊き立てのお米がどんなにおいしいか。そういうおいしいお米であれば、一表3万円でも買う人がいますよね。そして、それを沢山作ってお金持ちになるという道。これをどう考えるんだと。
そして、今の減反制度っていうのは、一生懸命やる人もいるが、「俺、関係ないよ」とそれで一生懸命減反に参加した人が価格をなんとか維持してるんだけど、「俺、関係ないよ」という人達は減反をやった人が苦労して維持している価格の上に乗ってお金を儲けている。これ、不公平って言わないんですか?そこは考えきゃいかんのじゃないですかね。

トークバトル

・農業を始めて7年目のリスナーTさんの意見。

まず、何故農業を辞める人が多いのか?というと、農業で経済的になかなか自立できないから辞める人が多い。それは、やはり輸入の農産物が多いというのが一番の原因だと思う。大豆、小麦、飼料作物、外食産業の食品、肥料もほとんど輸入。
だから、そうやって外国からどんどん安いものを入れるから、日本の農産物が低い価格になってしまって、農家が経済的にやっていけなくなる。

宮崎:お話はよく分かるんですが、お米に関して言えば、お米の輸入には700%の関税がかかっていて、事実上非常に厳しい輸入制限がなされているわけです。

T:だから、お米が出来すぎちゃってるんですよ。何故かと言うと、一つは皆食べなくなってきている。あと、外食産業のお米は輸入が結構多いと思います。あと、肥料とかを輸入してバンバン日本の農地に入れる。だから凄く米がとれる。米が簡単に出来るようになったんです。

石破:関税を上げれば強くなるかと言えば、お米は778の関税を張って、ほとんど輸入禁止的にしているわけです。じゃあ、米が強くなったかといえば、全然強くなってないわけです。

T:だから、米が出来すぎているから、価格が下がってるわけです。皆が減反をしないでどんどん作ったら、更に米の価格が暴落してしまうと思う。それで辞める人が増える。

石破:それはそうじゃないと思うな。米の値段が下がった場合、それじゃあ規模拡大しないとやれないね。ということになっていく可能性もある。でも、米の値段を維持しているから規模拡大が進まないんだと今のままだと・・・。
つまりね、私は本当に専業で一生懸命やっている人に後継者が出来なければそれは嘘だと思ってるんです。全ての人に兼業農家だろうが専業だろうが、同じ政策をやっていればその産業は駄目になるに決まっているんです。そこをどうしていくかということと、しかしながら兼業で小さな農地を守っている人は、どうやって保障していくかという事も考えていかなならんのでしょう。


兼業農家をやっているリスナーSさんの意見
今の農協を解体しないと伸びないと思います。農機具とか農薬、肥料を一括管理されているような状態なんです。どうしても、農機具なんか農協からお金を借りて購入している状態なもんだから、経済的なものを一括管理されているような部分がある。農協から金を借りてるもんですから、それに対してのプレッシャーというのが残ってしまっているということですね。


石破:それはそうなんですが、じゃあ農協が無くなって、異種兼業農家が存続するのかと言えば、それはまず無理でしょう。つまり、自分で農機具なんかを買いに行かなきゃとなる。あるいは、自分で売らなきゃとなった時に、農協なくして成り立つかということ。


私は、農業問題のもう一つの問題は、何のために農業をやっていますか?ということ。それが、日本特有の現象なんだけど、農地を生産手段としての農地じゃなくて、やがて道路通るかも、宅地になるかも。みたいな事で、農地は転用すると何十倍、何百倍の価格になるわけですよ。本当にそれが農業と言えるのだろうか?ということなんです。ただ、折角、土地持ってて、やっと値上がりするかと思ったのが、駄目駄目そんな事!と言われたときに、その期待感みたいなのを喪失することをどう考えるかということなんです。だから、本当に農地というものを農地として利用しなければいけないんだっていうのが農地法なんです。
本来、耕作放棄地なんて出るはずもないし、だから実は農業の問題って、転作どうするかという話ばかりスポットが当たってるけど、本当は農地をどうするんですか?というお話。
皆、嫌がってしたがらないけど、耕作放棄地が増えるのは一体何なんですか?農業の生産額が10年で半分になったってどういうことなんですか?農業を営む人の6割が65歳以上というのはどういうことなんですか?農地の問題に手をつけない限りは、あと10年経つとこの国から農業が無くなりますよ。


2方とも出来れば米を作りたい、作り続けたいという話。


石破:基本的に商売ですから、出来たものをどう売るかという話じゃなくて、売れるものをどう作るかということなんですよね。どう売るかどころか、出来たものは農協に出して後はまかせようということで、本当にそれがビジネスと言えるんだろうか?ということなんです。そういう人もいるということで、全ての人がそうだというわけではありませんが、米がこれだけ消費が落ちているわけで、そうであれば米以外のものを作らなきゃいかん。あるいは、米でも魚沼とかそういう所じゃなくても、一表3万で売っているところがたくさんある。
   
T:でも一表3万の米を皆が買うわけじゃないでしょう。

石破:それは作っても、地区によって違うでしょうけど、それならばもっと欲しいと注文が殺到してもそれに応ぜられないから作らないという所が日本国中たくさんありますよ。


T:一般の人が一表3万の米を恒常的に買うということは有り得ない。それは特別な話じゃないですか。ずばり言いたいんですけど、日本は工業とかを優先しすぎてて、農業を疎かにしすぎなんですよ。だから農業が衰退しているという現状が起こっているわけで、いくら自給率を上げろと言ったって、価格競争で勝てないものを幾ら作っても経済的に成り立つはずが無い。

宮崎:農業を疎かにしなければ日本の農作物は、工業製品にも負けないし、国際的な競争力を持って輸出産品になるような事になり得たということですか?

T:輸出というのは、根本的に考えがおかしいと思うんですけど、農作物というのは自給が基本で、輸出するために作るものではないと思います。

宮崎:考え方としては分かるけど、誰かが外に物を売って稼がなきゃいけないわけじゃないですか。だとするならば、工業製品を他所に売るしかないということになりますよね。


石破:これは問題が2つあって、一つは日本ほど農業に恵まれた国ってそうはないということを国民はよく理解しなきゃいかんです。つまり、ヨーロッパだって自給率が物凄く高いわけですよ。でも、ヨーロッパは気候から言っても、地形から言っても日本に比べて物凄く不利なんです。何でそこが自給率が高く、農産物を輸出できるようになったかということに目をそらしてはいけないということが、まずあります。それぞれの国がどういう政策を取ってきたかということを感情論じゃなくて、きちんと見ていかなければいけないということです。
つまり、どうしてドイツであれ、フランスであれ農地の面積がこれだけ広がっていったか?それは保護したから広がったはずではないんです。ですから、どういう農業に対して国が支援をするかということ。


T:つまり、大規模化して、広い畑で農業をする人を支援して日本の農業を伸ばしていきたいというお考えですよね。

石破:それは、条件が非常に恵まれているにも関わらず、どうしてこんなことになったか?が重要です。


宮崎:一般的に私達が朧な常識として感じているのは、日本は地形が急峻だからアメリカのように飛行機で農薬を撒くとかそいういうことは無理だというのは間違ってるんですか?


石破:それは無理ですよ。だから規模拡大してアメリカ並になって、そこまでコストを下げようなんざという荒唐無稽なことを考えてもしょうがない。農地を本当に農地としてフルに利用したい人と、農地を資産として保有している人と、それは分けて考えなければいけないということです。


T:資産として保有しているというのは農業をやれなくなっちゃったから、資産として保有するしかない状態になってるんですよ。もし、そこで売れるものが作れれば皆農業がやりたいんですから。周りにも農業をやりたい人がいっぱいいるんです。出来ないから辞めちゃうんです。


農業生産法人の代表を勤めるAさんの意見
一つはこれまで後ろ向きの政策の減反というものを見直していく必要がある。もう一つは、経験の無い若い人達も農業に参入できる機会を多く創ってあげることが大切。

宮崎:若い人たちが参入できるようにするための障害になっているものはなんですか?

A:農地法が障害になっていると思います。これまで、農地を保有してないと農地の購入が出来ないと。農地を保有しない人が新規参入しようと思ってもそれが出来ない。過去に農地を持っていないと出来ないということです。

宮崎:どういう趣旨でこういう法律が出来ているんですか?

石破:これは自作農主義というか、GHQが農地解放というのをやって、ゴム長一足で田んぼが買えちゃうみたいなことで、小作農を自作農にして、皆が農地を手に入れた。その時に、耕作者主義、つまり耕作するものが農地を保有することが最も適当だということが農地法の一文にバーン!と書かれている。だから、実際に耕作する人じゃなきゃ農地持っちゃいけないよと、そういう昭和20年代の法律が今日までずっと続いているというわけです。


宮崎:これは戦前に寄生的地主というのがいて、小作者を働かせて搾取していたという現実があったから、それを是正するためで、その時はある種の妥当性があった。


石破:それが農業基本法というのが昭和30年代始めに出来て、これから先は米を食べなくなるよね。そして、農業をやる人たちは工業や商業に移って農地を手放し、そうすると米以外にもっと儲かるものを作るようになるし、商業や工業に移った人たちの土地を借りて、あるいは買って、規模を拡大したらコストが下がるよねという綺麗なお話があった。それがそうならなかったのは何故なのだ?それは耕作器具が発明されたから。兼業で出来るようになっちゃいましたということです。
そして、田中角栄日本列島改造論等々これあり、わっと土地の値段が上がっていった。それによって、土曜日曜に田んぼに出てれば米が作れるし、自分の家ぐらいは食べられるし、農地の管理も出来るし、土地の値段も上がったし、転用がばんばん行われているしということなんですね。とっても、経済的な合理的な話ですよ。そこで、本当に農業がやりたいという人に土地が集まらないということをどう考えるかということ。

宮崎:農地法はどう変えるべき?

石破:今まで所有ということが大前提だった。それが耕作に変わっていって、今度は法律そのものはいじれないんだけど、利用権に着目して権利関係をやっていきたいし、そしてまた、国民の税金を使って農地を整備し、8年経ったら転用していいよっていうのは何のための国民の税金なんだということなんです。全体で見ていかないと日本農業そのものは瓦解しますよ。
また、株式会社がやるなんて持ってのほかみたいな話なんだけど、ここの要件は緩和していかなきゃいかん。そして、若い人たち農業生産法人に勤めて、あるいは株式会社も勤めてやっていけるという道をいっぱい開いていきたいと思います。