永住外国人地方参政権に賛成?反対? TBSラジオ「アクセス」文字起こし Part.3

16日放送のTBSラジオ「アクセス」は永住外国人地方参政権がテーマ。藤井誠二さんは条件付賛成派、ゲストの宮台真司さんは条件付反対派でバトル。リスナーの意見を踏まえた議論を文字起こし。

ここからは、賛成派の関西学院大学教授 李英和(リ・ヨンファ)氏と、反対派の首都大学東京教授 鄭大均(テイ・タイキン)氏を交えてのトークバトルになります。


(李)

経済学を専攻しているので、そういう観点から言うと、「代表なくして、課税なし」というのが揺るがない原則で、そういった意味では、代表を選ぶ権利がないのに課税しているのは基本的にはおかしいと思います。

サービスの代価を受けているからいいだろうと言いますけど、どういうサービスを受けるのかを決める権利というのが参政権です。定住外国人の意見を地方レベルでもくみ上げるというのが、民意を幅広く反映する手段として何の不都合もないんじゃないかと。

(鄭)

典型的な在日コリアンというのは、1930年代に日本に来ているんですね。ということは、日系アメリカ人の歴史よりは若干短いんですけど、日系アメリカ人が日本の政治なんかに無知であるように、在日も基本的に母国から遠い存在になってるということだと思うんです。確かに、韓国籍朝鮮籍を持っていますけど、韓国に対する帰属意識があるわけではないですね。そういう意味では、ペーパー韓国人という言い方をしますけど、そういう存在になっている。

一方で、外国人登録証を持っているわけですけども、外国人意識も無いわけです。従って、日本人と区別される事を差別と感じるような、そういう??を持って生きているわけです。私は、それをペーパー外国人になっていると言いまして、一方で自分を説明しにくい存在になっているわけで、そういう不透明性というものを解消するように在日というのは色んな形で努力をする必要があると思うんです。

〜回線の不都合で、音声が乱れていたので、鄭さん一旦退場。

(渡辺)

今のところ、在日朝鮮人には参政権を与えないということなんですけど、これはどう思いますか?

(李)

80年代の後半から、この問題が出てきてから以降、一貫して北朝鮮は反対してますよね。あるいは、朝鮮総連も。いらないと言ってますから、いらない人に与える必要はないんで、外れてもいいんじゃないかなと。

今後は、日本は労働力不足、少子化定住外国人をどんどん入れなきゃいけないと思うんですけど、働かせるだけ働かせて、税金を納めてもらって、政治に参加できないというのは

(宮台)

でも、それは当たり前じゃないですか、どこの国でも。僕らがアメリカで働いたら税金を払いますけど、アメリカの国籍もらえませんよ?

(李)

いやいや、そうじゃなくて、定住というね、

(宮台)

日本で問題になっているのは、定住じゃなくて永住ですよ?

(李)

永住資格を持っている人に与えるかどうか・・・与えるか与えないかは立法の裁量権の問題です。

で、国民新党が反対していますけど、国民新党はフジモリ大統領を参議院選挙を立候補にしていますよね。その時は別に議論にならなかった。その事の方が定住外国人地方参政権を与えるより、国政に与える影響が大きいんじゃないかなと思ってね。

(宮台)

逆に今の例は、エスニックアイデンティティーとナショナリティが別だという我々の捉え方が有り得るというケースをあらわしているんであって、それだったら在日コリアンの方々だって、エスニックリソース以外に日本のリソースを沢山使えるんだったら、どうぞご自由に帰化してくださいということでいいんじゃないですか?帰化したってエスニックアイデンティティーを保てるでしょ?

(李)

それは人によるでしょうけどね。私は、帰化制度を簡便化するということに反対しているわけじゃありません。それでも帰化しない、出来ない人がいるというのであればその人たちの政治参加をどう考えるかということと二本立てで考えればいい。もう一つ言えるのは、フジモリさんの場合は二重国籍を持っているからペルーの大統領になり、日本の国政選挙にも立候補できるんですけども、日本の二重国籍制度をどう考えるか、これは立法政策で色々議論すればいいと思います。

〜鄭さん復帰

(鄭)

基本的には在日コリアンというのは、日本国民として統合?されていい時期にきていると思うんですね。望むならば、コリア系日本人として生きていく。外国人参政権が多文化共生に寄与するという意見もありますけど、本当の多文化共生を望むのであれば、日本人という概念を多様化するのが一番確かな方法なわけで、そういう面ではコリア系日本人として生きていくという体でいいと思うんです。

まぁ、国民とはなんぞやというのを日本人の立場から考える人がいるんですけども、本当はこの問題というのは在日の立場から考える必要があるわけで、在日コリアン韓国籍、あるいは朝鮮籍を持っているわけですけど、しかし今は母国に対する帰属意識が弱くなってますし、文化的な絆とかそういうものも希薄になっています。一方では、内国民待遇をどんどん要求していると。ですから、そういう人にとって、韓国籍を持つ意味というのが問われてもいいと思うんですよ。在日コリアンの悪い癖だと思うんですけど、日本を問うという姿勢はあっても、自分自身を問うという姿勢が無いんですよね。日本の民主主義を問うだとか、基本的人権をうんぬんという前に、本当は些細な自分の国籍の問題を考えればいいというだけの話ですよ。要するに、在日というのはこれからも日本に住み続ける人ですから、大体日本の国籍が必要だと知っていますし、大まかに言えば、参政権に対する待望があるというよりは、むしろ品の良い形で日本の国籍を選択する機会を待っていると思うんです。

(藤井)

ご質問なんですけど、僕の周りにも在日コリアンの友達とか知人が多くて、その中で参政権の問題がどう議論されているかというと、それほど盛り上がっているわけでもないんです。これは、李さんに聞いた方がいいのかな、総連は北朝鮮から見ると海外公民じゃないですか。朝鮮総連は組織としては同化されるのは嫌だということで、選挙権はいらないと言ってますよね。民団は途中から変わりましたけど。やっぱり、そういう政治的な対立の中でこの問題が議論されるのが避けられてきたという側面があるんですか?

(李)

まぁ、在日コリアンのほうですよね。主な団体の意見が真っ二つに分かれたというところが大きいかと思いますけど。

(藤井)

今は日本の政治の側から提起されてる状態じゃないですか。

(李)

当時、もう一つ日本側の方で有力な論点だったのが、相互主義ですよね。日本は認めるんだけど、相手の国は日本人に認めているかと。この問題がクリアされない限りは駄目だという論調が強かったんですけどね。それが少なくとも韓国ではクリアされた格好ですよね。北朝鮮は、参政権そのもの自体が自国民にも保障されてない国ですからね。

(藤井)

これは政治的に見て、民団の策略じゃないかみたいな意見が一部にあって、そういうのはどうなんでしょう?

(李)

無いでしょう。私がこの問題に関わった、かなり最初の頃から、民団の方は傍観者というか、そ知らぬ顔をしていました。むしろ、民団から離れた人たちが個人の資格で始めた。

(藤井)

要するに、市民運動的なところから始まったわけですよね。

(李)

そうですね。当時を思い出しますけど、いま賛成に回っている共産党とか、あるいは旧社会党は当時は強行に反対していましたよね。私は憲法については専門外ですけど、こう思うんですよ。国民固有の権利というのは、ちょうど基本的人権が人間固有の権利だというのと同じで、奪ってはならないという意味ですよね、最低限。それを与える範囲を広げる事についてですよね。それを禁止しているものじゃないんじゃないかと。与える対象が広がっていく事で民主主義が発展してきたわけですから、そういった意味では定住外国人に広がる番かなと。在日コリアンということだけじゃなくてね。

あと、アイデンティティーが揺らいでいるから問題だと言いますけど、それを言うなら日本人は個々人にどんなアイデンティティーがあるのかと問われますから、アイデンティティーの揺らぎと参政権の付与はあんまり関係が無いと私は思います。

(鄭)

私が言うアイデンティティーというのは、なんというか、私はアイデンティティーと帰属の間のずれと説明しているわけですが、帰属というのは国籍のことで、これは客観的なアイデンティティーのようなものですよね。それは韓国、朝鮮籍を持っている限り、例えば韓国人の場合は、韓国人としてアインデンティファイされるわけですよ。外にいた場合は、韓国のパスポートを持って出るわけですし、外で事故にあった場合には韓国の大使館が在日コリアンを助けてくれるわけでしょうが、しかし、そういう人が来たとしても在日コリアンは韓国語で事情を説明する力が無くなっていると思うんですね。そういう風に、日本にいるとアイデンティティーと帰属のずれみたいなものがあんまり問われるということは無いんですけども、外に出るとすぐにそういうことが問われるようになると思いますよ。

例えば、韓国に行って、韓国語が喋れないのに韓国籍を維持しているとしたら、それはやっぱり何故韓国籍を持っているのかと問われると思うんですね。韓国人というのは、ある種の韓国人らしさを実践しない人間をあまり韓国人として認知しないと思うんです。それはもちろん、韓国人という概念としてはやや狭いものであると思いますけれども、一理はありますよね。そういうものに問われるというか、そういう色んな、他者に問うという体験はあっても自問する機会が在日はあまりにも少なすぎたと私は思います。

李さん、鄭さん出演終了。

(宮台)

僕は、永住外国人参政権問題は長い目で考えた方がいいと思う。というのは、このままだと日本は生産人口が急減をしていく。そうすると、生産人口を外国人で補うしかなくなっていくんです。その時に、元々のエスニックルーツは日本人ではないけれども、日本を愛し、忠誠を誓うような人が増えないと秩序が保てないし、社会の活力も保てないんです。だから単に融合するという話でもなければ、単に排除するという話でもなくて、基本的にはエスニックアイデンティティーを持ったまま、道具として日本語を使いこなし、日本人との関係を自由自在に取り持つように形成していくような外国人が増えないと、日本の地域社会、工業だけじゃなくて、農業にしろ畜産業にしろ外国人労働者なしでは回らないんですよね。それは日本映画にも散々描かれるようになってきている現実なんです。

ただ、住んでいる場所によっては、そんなことを意識しないで生きていけるので、単なる感情的噴き上がりで排除するという議論ができるんだけど、まず現実を見てみろという話です。現実を見たときに、最終的にはエスニックアイデンティティーは日本ではないけれど、日本を愛するような外国人を増やさないとどうにもならないですよね。どういう風にして階段を上っていくのかということを考えるしかないんです。

(藤井)

そうするためには、もちろん自助努力も必要だし、国のシステムとしてそういうような法整備であるとか、様々な制度の整備というのが必要で、両方必要だということですよね。