永住外国人地方参政権に賛成?反対? TBSラジオ「アクセス」文字起こし Part.1

16日放送のTBSラジオ「アクセス」は永住外国人地方参政権がテーマ。藤井誠二さんは条件付賛成派、ゲストの宮台真司さんは条件付反対派でバトル。まずはオープニングトークの部分を文字起こし。

(渡辺)

今国会に提出される見込みとなっていますが、法案の内容は不明な部分が多々あります。分かっていることだけを言うと、地方参政権に限定で、日本と外交関係のある国・地域の永住者に限定する方向だということです。

2008年現在で見ると、日本に住んでいる外国人の総数は221万人です。このうち在日韓国・朝鮮人、在日台湾人などの特別永住者が42万人。中国やブラジルなどの一般永住者が49万人となっています。

特別と一般について軽く説明すると、一般永住者というのは在留期間の長さや素行などを考慮して法務大臣が許可した人を言います。特別永住者というのは、1945年9月以前から日本に住む朝鮮半島、台湾出身者とその子孫を言います。特別と一般を合わせた数は、91万人。これを日本の人口に占める割合で見ると0.7%になります。特別永住者は、2004年は46万人いらしたんですが、毎年1万人程度のペースで減っています。これは大半が帰化して減っているということです。一般永住者は、毎年4万人から5万人のペースで増え続けています。一般永住者の出身国の内訳を見てみると、中国が14万人、ブラジルが11万人、フィリピンが7万5千人、韓国・朝鮮が5万3千人、ペルーが2万9千人、台湾が1万2千人、アメリカが1万1千人となっています。


(藤井)

最初に言いたいのは、一部、特にネットなんかで、「外国人参政権を認めると、対馬とかが乗っ取られたりするんじゃないか」とか、「人が大挙してやってきて、日本の主権が脅かされる」みたいな意見が噴き上がっているんですね。亀井さんも似たような事を言っていますが、もっと排外主義的に噴き上がっている意見というのがあって、僕はそれは言いすぎというか、妄想に過ぎないと思うんです。そこは宮台さんも同じですよね?

(宮台)

基本的には同じですね。噴き上がっている方というのは、永住許可されている外国人に限られているんだということを分かってないんじゃないかな。定住者と混同してるんじゃないの?政府の許可を受けるのも結構大変で、日本の場合はナショナリティの審査は厳密なので、それなりに長い間いて、日本人と遜色の無い日本語が喋れて、日本にそれなりのネットワークを持っている人しか許可がおりにくいんですね。

(藤井)

今回はあえて賛成派として発言しますけど、これは政治の問題だと思っています。参政権をくれと要求されてどうしましょうということじゃなくて、これは日本の国の形として、社会に参加する手段として参政権があった方がいいだろうとずっと思ってるんです。

宮台さんは、時期尚早だと仰っているんですが、そうなるといつまで経っても時期尚早だとなってしまうのでないかと。反対意見の中に、排外主義的ナショナリズムが噴き上がるから議論すべきじゃないという考え方があるけど、こういう意見というのはいつの時代も常にある。一体いつやればいいと言うんでしょうか?

(宮台)

それは全然違うと思いますよ。例えば、70年代初頭に日立就職差別訴訟というのがあって、その頃は日本人が在日と結婚するなんて、双方が有り得ないという感じだった。でも、段々そうではなくなってきて、日本人と在日の結構は普通になったし、帰化に対しての抵抗感も段々2世、3世となるにつれ下がってきた。そういう意味で言えば、特別永住者については、昔ほどのバリアはなくなってきている。

どうして僕が反対なのかといえば、特別永住者はそういう流れで帰化をしていて、4世、5世になると日本人のネットワークをそれなりに持っていらっしゃるので、参政権が欲しかったら国籍を取ればいいということにつきます。

帰化をするとエスニックアイデンティティーに傷がつくと言う方もいますが、その程度のやわなエスニックアイデンティティーなら捨てちまえというのが僕の意見です。極端な言い方をすると。

(藤井)

私は、「帰化すればいい」という意見には反対なんですね。フランスやドイツなんかのいわゆる移民国家では、国籍とエスニックアイデンティティーの問題は別ものという考え方がありますけど、日本はそうなっていなくて、在日のコリアンや台湾人の人たちは特別永住者ですから、帰化に対して特別な拒否感覚があるわけです。要するに民族性が奪われるということです。そういう意味で言うと、現在の帰化制度を使って、日本国籍を取ってから選挙権を取りなさいという意見には賛成できない。

(宮台)

特別永住者の方々が最初は2世までという約束で基本的には国籍を取っていないのに日本人に準じる権利を様々に与えられというのは、ご存知のように在日の方々の多くが強制連行で連れてこられたという左翼が噴き上げた神話が背景にあるんです。在日のなかで強制連行されてきた方というのはごく一部で、大半は一旗上げにやってきた人達なんですよ。ただ、区別がつかないから、あるいは戦争に負けて罪の意識というか原罪感覚というのがあったのでしょうか、まぁ、色んな人が混ざっちゃっているけど、しょうがないということで分かってやっている感じで特別永住の方々に対する特権の付与をやってきたわけです。僕に言わせると、あえてそれをやっているという感覚が段々薄れてきてしまっていることも問題だし、1世、2世とは違ってエスニックリソースを頼らず、日本人のネットワークをそれなりに頼っている人間が増えたのに、まだ4世、5世にも特権を与えるのが続いているのはおかしいし、

(藤井)

であれば、まず帰化制度を変えるというのが先に来るべきじゃないかと思うんですよね。例えば、二重国籍にするとか。

(宮台)

それは分かるんだけども、二重国籍を選べるようになるための前提は、それこそエスニックアイデンティティーと国籍を区別する事が出来るようになるということで、むしろそれを区別できるようになるための一つの訓練、あるいは橋頭堡として、在日の方々は参政権が欲しいんだったら国籍を取ってくださいと。そうすればエスニックアイデンティティーと国政を分離できる。

(藤井)

そこが僕は逆なんですよ。つまりは、国籍とエスニックアイデンティティーを別にするためには、入管法とか取り締まる法律しかない。権利を保護する法律が全然無くて、ヘイトクライムを取り締まる法律も無い。人種差別撤廃条約とかで民族性の担保とか言ってるけども、国内法の整備がされていない。それをやるためには参政権を使って、そこに乗り出していく

(宮台)

途中までは賛成ですが、だったら特別永住の人については国籍を取ってもらって、一般永住者について参政権を議論すべきだと思う。

(藤井)

具体的には、ブラジル人とか

(宮台)

そう。何故参政権を与えるのが早いかと言うと、基本的に彼らの中で参政権を要求している人が少ないということ。何で少ないのかというと、彼らがエスニックアイデンティティー、エスニックリソースを頼って生きるしかない状況に追い込まれているからで、何で追い込まれてるかというと、永住許可を持っている人というのは参政権を除いては日本国民に準じる権利を持っているんです。ところが、日本の経済界の都合で、例えば、ブラジル人については配偶者の親族であっても日系人という枠でどんどん入れるという入管法改正が90年に行なわれて、中国人についても研修生という名目でどんどん入れるというような改正が行なわれた。簡単言えば、都合のいい労働力、労働力のバッファとしてどんどん入れ込んで、まぁこれはどこの国でも同じなんですが、残念な事に彼らは多くの場合、生活保護とかが拒否されてしまうんです。窓口の役人にも話を聞きましたけど、「後ろめたい気持ちはあるけど、ずっと日本にいる保障がない以上、生活保護は出せない」というんです。これは行政の問題。

だから僕は、生活保護を受けようとしている方に対して、「行政訴訟を起こしまくれ、必ず勝てる」と言っているわけです。ただ、いわんところはね、行政訴訟というのは言葉の壁なんかがあったりして出来ないし、実際ファーストジェネレーションの方はどこの国でもエスニックリソースを頼っていきていくので参政権をあまり要求しない。ところが、2世、3世になると言葉も喋れるようになるし、義務教育プロセスを通じて、その国とのネットワークが出来ていくので、意識としては「同じような育ち方をしているのに、何で俺たちだけ差別されているのか」と言うようになるんです。しかし、日本の場合は生活保護をちゃんと受けさして貰えないし、義務教育も受けていないようなブラジル人とかは沢山いるわけです。2世、3世になっても言葉が喋れないわけね。

(藤井)

僕は、浜松とか三重とかのブラジル人学校を取材しました。宮台さんの言うとおり、日本の学校ではじかれちゃって、ブラジル人学校が林立しているわけ。その中で、必死に働いて学費を払ったり、本国から援助を受けたりして学校に行っている。その点で、行政の怠慢はもちろんある。だけどここは、日本社会というかシステムの中にどんどん参加してきて欲しいと思ってるんです、地域住民として。排除されているという意識があるわけですね。であるならば、地方参政権を持って頂いて参加して貰う。そして、自分たちの権利、例えば日本の学校エスニックリソースに間する権利が欲しいのであれば、そこで主張してもらうと。

(宮台)

僕は半分ロールプレイもあるけど、反対なんです。理由は単純で、基本的にエスニックアイデンティティーは持ち続けていただいても構わないんだけども、日本人との間との分離、つまりディバイドが大きすぎる段階でそれをやると、どちらも感情的になりやすいんですよ。なので例えば、生活保護をちゃんと受給する権利を行使していただき、我々もそれを援護して、参政権はないけれどそれを除いた部分については十分に権利を行使して日本のコミュニティと関係を持って頂いて、別にエスニックアイデンティティーを失っていないけども、偏見や感情的噴き上がりを抑止するような関係性、絆をつくらないと駄目で、それをつくらない段階で参政権を与えるのは凄い危険だと思います。

(渡辺)

にじり寄ってないということですね。

(宮台)

仰るとおりです。サラダボウルとメルティングポットの話で、アメリカはサラダボウルだってことで、同じように日本もそれなりにサラダボウル化が進まないと、参政権は危ないと思う。

(藤井)

生活保護の申請の問題とか、様々な生活のレベルで不条理が一杯ありますよ。だけど、それは行政の問題で、ブラジル人にも問題があるかもしれないけど、僕が条件付賛成と言ったのは、同時に選挙権と一緒に行政も整備をしていくというのが、やるべき方向だと思っています。浜松とか川崎は条例によって、参政権とまではいかないけどそれに近いものを付与しているんですね。

(宮台)

新宿の小学校によっては、6割、7割が外国人というところがある。お隣の山梨県も小学校によっては半分以上が外国人。結局、自治体によっては十分そういう現実があるんです。外国人と顔を合わせないで生きていけないし、職場や地域で顔を合わせて生きてきている。現実はこうだと分かってるし、それなりにコミュニケーションがあるところもある。そういう所はそれなりに交じり合ってるから、そこは参政権を与えてもいいと思うの。ただ、日本全国色んなところがあるので、どこも交じり合ってるわけじゃないんですね。

だから僕は、そういう交じり合い始めているところをベースにしてやるべきで、今即断しちゃうと感情的な噴き上がりが出て、大変な事になる。妄想で噴き上がっているやつは「死んでください」という感じで、なんの議論をしてるんだあんたらはという話なんですね。まだ、そういう人が沢山いる段階なんです。

(渡辺)

今から、外国人登録者数が多い県を順番に申し上げるんですが、人数が多いからといって、交じり合っているというわけではありません。最も多いのが東京都です。全国18.1%を占めていて、以下、愛知、大阪、神奈川、埼玉、千葉、静岡、兵庫、岐阜、茨城の順になっています。