ベーシック・インカムに賛成?反対? TBSラジオ「アクセス」文字起こし Part.4(最終回)

1月13日放送のTBSラジオ「アクセス」に、飯田泰之さんが出演され、BIについての議論がなされました。反対派の萱野稔人さんと飯田泰之さんの議論です。

(萱野)

私は左翼と見れているので。賛成じゃないのかと思われるかもしれませんが、反対なんです。

何故かと言うと、一番目の理由としては、「最低賃金の意味が無くなってしまうのではないか?」ということ。要するに、お金を稼ぐという事に関して下限がなくなっちゃうと思うんです。それで最低賃金のルールの意味が無くなる。これが大きいです。

(渡辺)

下限のルールが無くなるということは、どうしていけないんですか?

(萱野)

一時間10円でも労働できるという話になりますよね?それが問題だと思うんですよね。

(飯田)

これは、働く事の意味が無くなるのでは?という問題に近いと思うんですが、僕自身は最低賃金が無意味化するというのもBIの美点だと思っている部分がありまして。つまりは、労働の値段というのはお互いが合意さえすればいくらでもいいんじゃないかと思うんですけど、どうでしょう?

(萱野)

常に労働の契約というのは不平等なもので、それに対してお互いが合意というのは想定できないと思います。

(飯田)

最低賃金というのは、事実上破るのが簡単なところがあるんです。と言いますのも、表面上は守っていても、サービス残業を入れると最低賃金以下であるという人が結構いると思うんです。それであれば、個別の契約については、企業側に有利なのはしょうがないでしょうと、その代わり、税制面であるとか支援の面でBIという下駄があるというのはありだと思うんです。

(萱野)

それで言うと、月5万円だと70兆必要だという試算でしたが、その70兆を公共事業だとか生活保護、様々な手当てに拡充した方が良いと思います。BIに使うよりは、別の使い方をした方がいいというのが私の立場なんです。

(飯田)

公共事業だと、国が最終的には何を造るか決めてしまうところがあって、実際国がやる公共事業で意味があるものというのは、段々少なくなってきているというのが一つと、政治のプロセスで本当に有用な使われ方がされるかというのは分からない。それに比べると、BIで貰った5万円は、自分で使い道が決められるというのが、BIを推す理由です。

(萱野)

やり方の問題で、無条件に人々にお金を与えるのか、公共事業として仕事を与えるのかというところに差が出てくる。私は、公共事業で与えるべきだと思います。

(渡辺)

思想的な問題意識は持っていらっしゃるのでしょうか?

(萱野)

先ほど、労働を通じて人々は社会参加をするんだという話を白石さんがしていましたが、そこに近いものがあって、社会的な統合というもの、あるいは人々が社会に参加するということに関して、労働って重要なファクターになると思うんです。そこで、働いたからこそお金が貰える、そのお金で根源とか承認だとか誇りを得るというシステムは、やはりずっと存続すると思っていて、飯田さんはずっと経済成長が大事だということを仰っていますが、何故経済成長が大事かと言えば、例えば、お金を稼いで、親よりも良い生活ができる、それを自分自身が労働で頑張って、達成できるところに経済成長の意味がある。これは、仕事を通じた社会統合だと思うんです。BIというのは、そういったものを裏切ってしまうものだと思うんです。

もし、BIの財源が調達出来るんだったら、公共事業に使うべきだと思うんですよね。

(飯田)

社会に参加するという喜びを、必ずしも賃労働で得る必要はそれほど無いんじゃないかなと思っています。労働のインセンティブを削ぐほど、沢山お金をあげるのは反対で、働かなくてもいいほど上げると、萱野さんが仰るように社会の統合が難しくなる。僕が考えているものは、働いていてもちょっと苦しいという人に下駄を履かせるシステムであって、実際、5万円ではなかなか暮らしていけないと思うんですけどね。

(萱野)

飯田さんのお話でいくと、BIである必要は全く無いと思うんですよ。要するに、下駄を履かせる事が出来ればなんでもいいわけですよね。それだったら、やはり社会的に労働を与えるということが可能な公共事業のほうが良いんじゃないかと思うんですけれどね。財源の使い方として、いかに社会に参加出来て、尊厳を得ることが・・・バトル終了の鐘が鳴り時間切れ