石川知裕議員逮捕を受けての、二木啓孝氏、武田一顕記者の解説 TBSラジオ「アクセス」文字起こし

昨日のTBSラジオ「アクセス」のテーマは、「民主党小沢一郎幹事長の土地購入問題で東京地検が関係先を強制捜査。あなたは検察の動きに納得していますか?」というもの。その中の、二木啓孝氏、武田一顕記者の解説を文字起こししました。東京新聞社会部部次長・元司法クラブキャップの杉谷剛さんがゲストで、その話も興味深かったんですが、労力がないので省略いたします。


(麻木)

検察側がこの先に見ているのは、贈収賄なのか、なんなのか分からない。この先にある狙いというのは何なんでしょう?

(二木)

まぁ、最終目標は小沢さんですよね。ゼネコンの談合に指示を出し、見返りに裏献金を受けたんじゃないかと言われてますが、まず前提として、贈収賄事件にはなりません。何故かと言うと、小沢さんには、職務権限が無かったわけです。贈収賄というのは、例えば国務大臣とか、国家における委員会の理事とか、そういう立場を利用してという事になるので、職務権限が無い人は贈収賄にならないということです。

それで、こんなにとっ散らかって、長引いた捜査は初めてで、西松うんぬんの件からほぼ一年ですよね。そして、検察がマスコミにこんあにリークするケースも初めて。一年かかって、こんな状況というのは、捜査のやり方がおかしいと思う。

(麻木)

今回の家宅捜査なんですが、多くの場所は大久保隆規被告が去年の3月に逮捕された時に家宅捜査された場所と重なる所があって、同じ所に二回入るというのは、そこで何か出ると思ってやってるんでしょうか?

(二木)

わかんないですよね〜、これは。大体資料を一切合財持っていくものなんですが、もう一回入るというのは、なんとなく「俺はやってんぞ」ということを見せたい気がしてしょうがない。

(麻木)

重大な疑惑があったとしても、国家権力をもって強制的に全部持ってっちゃうわけですから、それで「何も出ませんでした」じゃ、大変な責任問題ですよね。

(二木)

逮捕された石川容疑者ですが、小沢さんとの関係をどう見ているかというと、普通に考えれば、小沢さんが石川容疑者に対して「これは記載するな」と指示したとなる。こうなると、共犯を問えるかは分からないけど、小沢さんにも資金隠しの意図があったということが読めますね。

(麻木)

それだと、政治資金規正法違反の共犯だということですよね。

(二木)

私は、今回の捜査を見ていて、どうも検察側は最終的に小沢さんを脱税であげる気だなと思っているんです。何故かと言うと、ちょっと古い話になりますけど、93年に当時自民党のドンと言われた、金丸信さんが逮捕された事件がありましたが、これを思い出すんです。政治資金規正法違反で大した罪に問えないということになった時に、脱税という着地点をやった。そういう風な形を想定しているんじゃないか。そうすると、04年の4億円というのは、どこから出てきたの?ということで、ゼネコンからの裏金か、政党助成金を溜め込んでいたのか、一説では奥さんの相続税を借りたという話もある。

(麻木)

奥さんのお金を銀行から借りられるまでの繋ぎにしてたんだとしたら、何の容疑にもならなくなっちゃうわけですよね。

(二木)

そうですが、政治資金収支報告書に記載されなかったというのは残ります。裏金を「溜まり」として持っていて、税務申告もしてないとなると、脱税であげることが可能で、どうも隠し玉があってやっているのかなという風に思えるんですが

(麻木)

じゃあ、ずっと遡ってお金を全部洗い出さなければ発見できないですよね。

(二木)

ただ先ほども言ったように、物凄くとっ散らかった捜査なんですよね。あっちへ行ったり、こっちへ行ったり、元に戻ったりみたいな。「筋がいい」「筋が悪い」という言い方を僕らはするんですが、こんな筋悪な捜査は無いと見ている。そうすると、「なんでこんなに執着するの?」ということが出てくる。

(麻木)

「検察VS小沢」なんて言われ方をしますが、単に一大物の政治家の金の問題を虚心坦懐に突っ込んでいきましたというよりも、「小沢さんに力を持ってもらっちゃ困る」、「民主党が政権にいてもらっちゃ困る」っていうようなことが背景にあるんじゃないの?っていう説があるんですけども、その辺はどうなんですかね?

(二木)

それを言うと、02年の鈴木宗男さんの逮捕と、佐藤優さんの逮捕があって、佐藤さんが後に「国策捜査」という本を書いた。つまり、元々そういう方針を決めてやっている、法と正義に基づかないことを検察がやっているんじゃないの?ということで、検察も官僚組織の一つですから、小沢流が嫌でやっているんじゃないかとも見れるし、

(麻木)

検事総長の人事に手を突っ込まれるのを阻止したいからやっているなんて書いているところもありますけど、それはあるんですか?

(二木)

もし、この件が中途半端にぽしゃった場合、小沢さんは報復人事をやるなんていわれてますね。まぁ、この辺は分かりませんけども、この捜査の方法と長期化は尋常じゃないように私には見えるんですけどね。

(麻木)

権力と権力のガチバトルみたいな感じで、それがきちんと法にのっとって適正に振るわれているならいいんですけども、どちらの立場に立つとしても、そこに権力を笠に着た逸脱があれば問題ですよね。

(二木)

違法行為があったら摘発するというのは当然というのを前提にしてなんですが、長いことやって、ようやく辿り着いた4億円。正直言って、別の意図を感じます。

(武田)

国会の直前に逮捕ということで、「政治への影響というのは最小限にとどめるべきだ」と常々言ってきた東京地検がこういう行動に出たことに対して、民主党からもそうですし、国民からの批判というか意見がある程度出てくることが予想されます。

(二木)

18日から国会が始まる。国会が始まったら、不逮捕特権が出る。だから今日逮捕というのは、分かりやすいといえば分かりやすいんですが、身も蓋も無い感じがして、あざとさみたいなのを感じちゃうんですがね。

(武田)

しかも、石川議員については話が出てましたけど、大久保被告も逮捕ということで、「前に調べた時にちゃんとやれよ」という話も出てきますよね。

民主主義か法治国家かという話がありまして、法律に違反したから何でもやって言いかと言うと、実は普通の先進国では民主主義の理念の方が優先するんですよね。ところが、日本はどうもそうじゃなくて、法律をおかしたかどうかはこれから裁判で決めることですが、逮捕された時点で「悪い事をした」と叩かれる。本当に悪いことかどうかを冷静に見極める必要があって、なおかつ政治資金規正法違反ですから、今の段階では微罪ですよね。

(麻木)

二木さんは、脱税を狙っているんじゃないかということなんですが、そこまでいきますかね?

(武田)

捜査の行方は分かりませんが、一つだけいえるのは、「去年の西松の時には無かったじゃん」ということが歴史的事実としてあります。あの時に、今回のことも含めて、きちんとやっとかないと駄目ですよね。そして、検察の都合で国会直前にバタバタやるのは、民主主義国家として考えた時にどうかという視点は常に忘れてはならないということです。

(二木)

国会への影響はどれくらいありますかね?

(武田)

野党が攻勢に出ることは間違いないですが、自分たちはどうなんだというのがありますから、そこは弱みとなる。

あと、説明責任と言いますが、私は何度も、「そんなのは得体の知れないものだ」と言っていて、説明をいくらしても納得しない。去年、西松の件で小沢さんは説明しましたけれど、足りないと。結局、頭を丸めて「東京地検さん、ごめんなさい」とやらないと説明責任を果たした事にならないという論理なわけです。そんなのは本来の意味での説明責任ではありませんから、まぁ、月曜からどういう攻防戦があるかというところに注目したいですね。

いずれにしても、この話が終始、国会でやられるとすれば、景気とか暮らしがどうなるかということが一番大事な国民が最大の被害者となるということですね。