「2010年、私は日本に提言する!!」宮台真司デイキャッチャーボイス 文字起こし

http://www.tbs.co.jp/radio/dc/fri2/index-j.htm
昨日放送された、TBSラジオ「デイ・キャッチ!」のコーナーを文字起こし。宮台真司さんの日本への提言です。

原口一博総務大臣が提唱している「原口ビジョン」は、まさに宮台さんが提唱としていることを推し進める要素があると思います。何度も言いますが、これがほとんど注目されていないのがとても残念です。

元旦に各識者の提言なんかを見ていると、「日本国家がどうのこうの」というものが多すぎて、カチンと来たので、そのことに苦言を呈したいと思います。

先進国や新興国と比べて、日本だけが特殊なところがあって、それは「共同体的自己決定」がないということ。自分たちの地域のことは自分で決める、自立した経営企業体で自分たちの地域社会を回していくという発想が無い。その理由は、明治維新以降、集権的な再配分、つまり中央に依存する形で政治が行なわれてきたという事があります。抽象的に言えば、日本は全て外圧の連鎖の中で政治が行なわれる。

これからは逆向きが必要で、「自分たちの地域はこう回す」という発想が沢山あって、その実績を背景にして、より大きな単位である地域や国が発言権を獲得して、その発言権をベースに国際社会で影響力を行使するというゲームがもう始まっているんです。

環境行政について言えば、鳩山さんが「CO2を25%削減する」と言って、たまたまパスポートになったけど、一年後はそうはいかない。「あんたらのところは地域社会の実績が無いから、何を言っても駄目」というような事を言われかねないんです。

東アジアを重視することや需要を喚起が重要だというのは、それはそうなんだけど、そんな事は小さな話で、重要なのは、地域社会を自分達で回すという人間をどう育てるかということ。

福山哲郎外務副大臣と出した本でも、「政治家や役人に任せる政治から、引き受ける政治へ」という話をしました。これは正確に言うと、自分たちが引き受けようと思えば、引き受けられるという体制になったんです。ただ日本は、自分たちで地域社会を回すために、政治を引き受けた経験が無く、せいぜい公共事業を通じた再配分を要求するというのが専らだったんです。これが日本の最大のハンディキャップで、経験が無いから、自分たちの地域社会を自立した経営企業体として回すアイディアなんて、そう簡単に出てくるはずが無いんです。そこでどうするかということが問われているんです。

僕は、自立した経営企業体としての地域の再生には、一次産品を重要視する事が重要だと思います。これからは、自分達で地域を回すためのアイデアを自分たちで参加して出さなきゃ駄目で、「自分たちはこれをやるので、それをやりやすい様に国は支援してください」というやり方以外は、意味を持たない社会になるんです。

僕のところにまで、「陳情をどこに出したらいいか分からない」みたいな相談が来るんですが、これからは陳情が効かない社会になることを覚悟しなければならない。それは、政権交代が起こったからではなく、国にお財布が無いから。

2つ方向性があると思っていて、学習のモデルになるような成功事例が勃々上がってこればいいのになというのが一つ。それとは別に、地方は空洞化しきっちゃっているから、バイパスを作って、都会に生きている人間に農業の再生を含めた、色んなアイデアを都会から離れずに出してもらうというやり方があると思います。

いずれにしても、70、80歳になった農家の人たちに、新しいアイディアを出して競走しろというのはあまりにも酷なので、新しい世代が年長世代の持っているものを存分に継承しながら、新しい図式に基づいて行動できるような体制にする必要があり、その為のアイデアを各地域が次々に出していくという競争をしないと駄目なんですが、相変わらず陳情をして国に頼るやからがまだ多い。引き受ける能力を身に付ける課題が大きく横たわっているなと思います。