ひきこもり問題を考える TBSラジオ「Dig」テキスト化 Part.1

引きこもりの容疑者、口論絶えず…5人殺傷 : 社会 : YOMIURI ONLINE

今週木曜日のTBSラジオ「Dig」のテーマが「ひきこもり」だったのですが、何の因果か、その二日後の本日、悲しい事件が起きてしまいました。

ポッドキャストで特集の全編が聞けるようになっているのですが、より広くの方に「ひきこもり」問題について考えて頂きたいので、テキスト化をしました。

パーソナリティ:荻上チキ、外山惠理アナ

ゲスト:斎藤環精神科医

電話出演:池上正樹(ジャーナリスト)、井出草平社会学者)

  • ひきこもりの定義

(外山)

ひきこもりってどういう状態の人のことを言うんでしょうか?

(斎藤)

これは定義があって、期間で言いますと、6ヶ月以上と決められています。

そして状態としては、皆さん家から一歩も出ない人というイメージがあると思うんですけど、外出するかしないかはあんまり大きな問題じゃないんです。

人間関係があるか無いか。それから社会に参加しているかどうか。という会社や学校に所属しているかどうかが一点と、それから家族以外に親しい人間関係があるかどうか。これが全く無い状態が引きこもりということに今はなっています。

(外山)

ひとり暮らしの人で、食料を買ってきたりしていても、そういう状態であれば、ひきこもりということなんですね。

(斎藤)

はい。極端な例ですが、毎日遊び歩いている人もいます。単独行動だけで生活している人ですよね。

荻上

大分県精神保健福祉センターの2004年の調査では、一切部屋から出なくて外から様子がわからないという人は全体の10%に満たないぐらいで、家庭内で部屋から出るんだけど落ち着きが無いとか、外には出ないけど家庭内では普通にしている人が2、3割ぐらいで、その他の多くの人は、時々自分で買い物に行ったり、外に出るという形になっているようです。

(外山)

それは普通にひとりで行動するのが好きというだけじゃないんですか?

荻上

趣味の問題と違うのかどうかという質問だと思うんですが、いかがでしょうか?

(斎藤)

好きか嫌いかでいうと好きではあると思うんですが、ずっと一人というのはきついわけですよ。時には誰かと楽しくやりたいという思いはなくは無いんだけど、これが出来ない。ここに壁があります。まず人間関係のつながりがないということです。

荻上

出来ない原因はどこにあるのでしょうか?

(斎藤)

端的に精神科の症状の話をすると、対人恐怖の症状、最近は社会不安障害と言いますけど、人と繋がることが恐くて出来ない、これがまず一つあります。2番目の大きな要因としては、脅迫症状といって、一種の潔癖症みたいなもので、手がちょっと汚れただけで洗面所でずっと手を洗うような。こういう症状がある人は本当に外出が出来なくなってしまうんです。

荻上

厚生労働省の定義だと、「6ヶ月以上、自宅にひきこもって、会社や学校に行かず、家族以外との親密な対人関係がない状態」って書いてあるんですけど、状態という事は引きこもり自体は病名とはまた違うわけですよね?

(斎藤)

とっても分かりにくいと思うんですけど、近い言葉で言えば「不登校」があって、これは病名じゃなくて、学校に行ってない状態にある人のことで、「引きこもり」も同じジャンルの言葉と思っていただければと思います。現象を示す言葉ではあるけれども、病名や診断名ではない。

これはメリット、デメリットがあるんですけども、私は病名ではなく状態であることに意味があるとして積極的に使っています。