ベーシック・インカムに賛成?反対? TBSラジオ「アクセス」書き起こし Part.2

三菱総合研究所政策経済研究センター主席研究員・白石浩介さんとの議論です。
Part.3 http://d.hatena.ne.jp/benitomoro33/20100127/p1

(白石)

会社から見ると、仕事の選択というのが一種の人気投票になると思います。そうなると、人気の無い会社は非常に人集めに苦労し、人が集まらないと賃金を上げようという話になると思うんですが、賃金が上げられる状況にはないところが沢山ある。すると、海外に逃げていくしかないんじゃないかということになると思います。

もう一方の人気のある仕事でも問題が出てきて、会社の人がずるく考えて、「ただでもやらしください」という人に、「じゃあ、君はただね」という話になってくる。そうすると、BIが人気がある会社の儲けになってしまうかもしれない。

そう考えると、雇用のミスマッチを考えたときに、会社の方は保障がないから、人が上手く定着しなくて、日本から仕事が無くなってしまうんじゃないかと、少し考えてしまいます。

(飯田)

そうでしょうか。実は、僕は白石さんとほぼ同じストーリーを考えて、それはむしろ望ましいと思わざるを得ないんですけれど、月に5万円を貰っていたら働きたくなくなる、これをシットジョブと言うんですけれど、シットジョブが日本にあることがそんなに重要なのかということが一点。

もう1点は、みんなが働きたいと思う、または働きたいと思う高い給料を払えるような会社に人材が集まるということは、むしろ労働力のリアロケーションを成長産業に再配分していく意味で良いところがあると思うんですが、どうでしょう?

(白石)

最初の論点に関しては、動く人というのは非正規とかパートで、そういう特性を考えると、パートの人を沢山雇っている会社を考えると、困ってくるんじゃないかなという気がします。

次の論点に関して、給料の高いところに人が集まると言うんだけども、集まってくる人に対してお金をちゃんと払うメカニズムがあればいいんだけど、正当な給料を払わず一部を懐に入れるような会社が出てきちゃうんじゃないかなと。

(渡辺)

中小零細企業に関しては、どういう影響が出ると思われますか?

(白石)

きつい仕事なんかはみんながやりたがらないので、人集めに苦しむと思います。なので、中国に行きましょうかとなる懸念があると思います。

(飯田)

企業サイドでBIを薦める人は、企業が負担する社会保障費が安くなるので望ましいという考え方をする人もいる。更に、いい環境を作れる職場というのは、比較的賃金を抑えてもちゃんと働いてくれる人を確保できる。国内に、やりがいがあって職場環境も良い職業を溜め込む良い手法になるんじゃないかと思うんですけど、それは企業によって異なるところがあると思います。

(白石)

私は、どちらかというとBIに反対で、人間が働くということは社会に参加するということだと思うんです。なので、働かなくてもいいんだよと言ってしまうと日本の社会はバラバラになってしまうんじゃないかなと思います。

(飯田)

これは湯浅誠さんが仰っていたことなんですけど、「お金を貰ってする仕事だけが仕事ということでは無いんじゃないか」ということで、お金を貰って働くんじゃないけれど、ボランティアやNPOというところに活躍の場を移していくということもあるかもしれない。それも広い意味では労働だと思います。