完結編初見感想 & 過去の監督インタビューから読み解く『エウレカセブンAO』

駆け足的だし、作品全体として過剰とも思えるメタな要素のせいで情報を処理するのに手一杯。また、キャラ描写も中途半端で役割的な感じになっており、愛着を持てるキャラがいなかったのも大きい。さらに放置したまま終わるので存在感の薄さが際立つ。

結論としては、面白かったかどうかで言うと、退屈だったというのが正直な感想です。

とりあえず、もう一度見るつもりですが、個人的な好み以外の部分で感じたことを、過去の劇場版エウレカセブンの時の監督インタビューを元に脈略なく書き留めておきます。



監督はインタビューで、オリジナルとは何ぞやというようなことを語っていて、劇場版については『「これはコピーかどうか」ということを、まるっきり考えないで話をつくった。』と話していますが、この作品は全くその逆で、あえて開き直った感じでコピーを意識的にやっていて、特に後半の展開と結末なんかは、近年流行った作品の類似要素が強く意識されているなと感じました。一部の人にパクりだ!とマジツッコミされることを避けるため、エウレカセブンでなければいけなかったし、エレナを分かりやすいメタキャラにしたんじゃないかと思います。

そんな中に沖縄問題という現実的な要素を入れていて、そこがこの作品の肝と思ったけど、なんとなーく何が言いたいかアオのセリフから推し量れるぐらいだし、これもまた後半は存在感が薄くなって、ファンでもこの点に着目してる人は殆どいないんじゃなかろうか。



トゥルースは、凄くいい加減なキャラで全く共感は出来なかったけど、その名の通り「真実」を表していて、この辺は先ほど紹介したインタビューの2を読めば、このキャラの意味がわかるんじゃないかと思います。それにしても、ヨハンソンとは何だったのかという感じですが。

ナルも最後やっつけな感じで扱われていたけたど、広義的な意味での家族の愛の物語という観点からみると必然とも言えなくはないかなと。


この作品で最も特徴的だと思うのは大人の存在で、「責任ある大人」とはなんぞやというのが描かれており、歴史と未来に責任を持とうとするカッコいい大人が多く、その点はインタビュー3を読めば監督の思いがよくわかります。この点は良かったなと思いましたが、いい人ばかりでドラマ的につまらなくなっている要因にもなっている。

特に気の利いたまとめはなく以上で終わりです。

エウレカセブンAO

クレオパトラな女たち 総評

美容整形クリニックを舞台にした、様々な人生模様を通じ整形のあり方を見つめる。という内容だったけど、後半につれスタッフの恋愛を中心とした恋愛至上主義的な内容にシフトしていき、脚本の大石静さんお馴染みのテーゼが全面に出て、しかも打ち切りによる強引な展開で締めという微妙な終わり方をしてしまいました。

夫と子供との関係が殆ど崩壊しているのにも関わらず、市井先生に子どもが成人するまで我慢して育てろと言う峰太郎の無茶振りにも驚いたけど、戻ったら何故か普通に家族団欒していて、何この家族wと笑ってしまった。

整形シーンはとてもリアルで、ちょっと目を背けたくなるほど丁寧に描写していて好感が持てたし、女性脚本家だからこそ書けるような、男性はあまり直視したくない要素もあるリアルな女子トークがとても巧く、等身大な感じが出ていて良かったんですが、惜しい。

忘れてはならないのが、このドラマの人気を押し上げるのに貢献したであろう要因でもある、綾野剛演じる、同性愛者の黒崎裕の存在で、一部女子の受けを狙っているところもあると思いますし、そこに違和感を感じる方もいるでしょうが、同性愛者の恋愛を描いたドラマは自分の知る限り久々で、これをきっかけに、同性愛者に限らず、マイノリティの恋愛を描くドラマが増えてほしいなと、ハートネットTVの一視聴者として思いました。

『人類は衰退しました』1話 雑感

原作は1巻だけだけど読んでいて、それなりに楽しみにしていたのですが、なんか知らないけどヒロインの髪は短いわ、キャラがちょっと違う(成長した?)わの1巻すっとばした話で、肩透かしをくらいました。

なんでこの話を最初に持ってくるのか、まるで意味が分からない構成で、ある程度の世界観の説明はあるものの表面的でざっくりとしたもので、原作未読者に不親切。

しかし、いかにも子ども向け的な見かけを面白くして話が分からなくても楽しめるようにというような配慮を感じる演出をしていて、これは家族でも楽しめるようにと意図してやっているのか。助監督に小坂春女さんを起用してることからそんな気もするけど、ちょっと子どもっぽすぎるところがあるし、後から説明があるだろうにせよ髪についてのネタなど脚本的に筋が悪いところがあり、画面の向こうだけ盛り上がってるような感じがして、あまり楽しめませんでした。

唯一良かったのは、妖精さんの独特な言葉遣いと、せわしない掛け合いが違和感なく再現できていたことぐらい。ただ、口開けっ放しで喋っていたのには少々違和感が。

気になるのは、1巻のエピソードはこのままやらないのか、回想あるいはアレンジという形でやるのかということ。ペーパーザウルスとの闘いを映像として見たかったので頑張ってほしいところ。

『 ATARU 』総評

全体としては楽しめたのですが、謎解きの部分は少々ご都合主義的ではあるし、真実を追求することに伴う痛みや、障がい・病気の捉え方に関する提起はあったものの、当初、櫻井武晴さん脚本ということで期待したずっしりとくるような内容ではなく、少々物足りないものがありました。

PがSPECやってる関連でSPECの小ネタやリンクしたような内容があるのはまあいいんですが、メイン演出がTRICKをやっていた木村ひさしさんであるものの、演出面でも堤幸彦監督を真似たような感じにしなくてもよかったのでは。キャラの濃さと小ネタは回によって煩いと感じるところもあったけど、全体としてはだれるのと重くなりすぎるのを回避する効果はあった。ただ、最終回の感動のシーンにタモリさんを投入するのは首をひねる趣向。

演出に絡めてちょっと気になったのは、この作品は障がいを面白可笑しく見せている面があり、その辺当事者の方なんかはどう感じられるのかなということ。内容としては、障害当事者(厳密には障害者に限らず)の周りの人がきちんとその障害のこと(困っていること)を理解し、かといってカテゴライズせずその人個人の個性と向き合いサポートしていく必要があるという全うなメッセージが込められたものなのですが、少々内容と演出に齟齬がある感じもありました。

障害問題に絡めて『困ってるズ!』を宣伝して〆

http://blogos.com/article/41955/

『エウレカセブンAO』8話までの雑感

エヴァを彷彿とさせる要素がいくつも出てきて「またか…」と思いつつ、恐らく意図的にエヴァと逆のことをやっていて興味深い部分もある。

また、沖縄を舞台にして現実の社会問題に切り込むような要素もあるが、沖縄を離れてしまったし、トゥルースという少年漫画的なキャラが出てきて話の核がどこに向かうのか分からない感じに。ここはこれからの展開を見ていくしかないですね。

残念なのは、ちょっと戦闘がつまらないところ。ハラドキ感があんまりなく、主人公無双すぎるのと段取り的になってしまっているように思う。トピックとしてブルーノの死があったが、なんで敵に突っ込んだのかよく分からない部分もあり、描写不足と感ずるがそこに裏があれば別で、トゥルースがなりすましたとも考えることができます。そうすると、死んだはずのブルーノが!という展開に持って行けるのでありそうだなと思うのですが、いかにもなネタなのであんまやってほしくないと思ったり。

観たドラマ雑感 2012年冬季

13歳のハローワーク

別に13歳のハローワークを原作としなくてもよかったような、世にも奇妙な物語的なタイムスリップものでSFとして優れたところはないし、いい加減なところもあったけど、コメディ的な部分がよく出来ていて大いに楽しめた作品でした。とにかく配役が神懸かり的で、役者の魅力を引き出していて、特に子役が輝いていた。三上や社長のその後が描かれなかったのは残念。

聖なる怪物たち

最終回はすごい駆け足的で司馬先生の「みんな守りたいものがあった」というお説法で解決しちゃうし、看護士の平井と兄のエピソード放置という散々な内容で、打ち切りだったのかなと思ってしまいました。

あと三恵が代理母を受けた理由も、予測はできるけどしっかり描かれなったし、日向が惚れてやっちゃったというくだりもいらなかったんじゃとか、雑なところも多々。他にも司馬先生は一面的な人物なのに、素晴らしい医者であることをみせるのに時間をかけすぎていたりして、話を絞れば2時間ドラマで十分足りたのでは。

タイトロープの女

ワイヤー工場を舞台とした、朝ドラ的熱い工場再生物語に昼ドラ的ドロドロを少し足したような内容。一面的じゃないくせのある魅力的な人物ばかりで、主役二人もよかったんですが、個人的には笹野高史さんと、本田博太郎さん演じる工場創設メンバーがお気に入り。

ドラマ部分は今期の中では一番よかったんですが、舞台が現代なのに、昔からあるようなカラーワイヤーがさも今までになかったものとして扱われたりして少々リアリティが薄かったのは残念なところ。

妄想捜査~桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活

原作未読。妄想捜査とあるけど、主人公が妄想で事件を解決するわけでなはく、事件解決はヒロイン担当で、妄想はネタとして扱われるコメディもの。とにかく荒唐無稽な展開&設定だが、それが面白さに必ずしも繋がってないような所が多々。この世界の現実が非現実的なので桑潟准教授の妄想が霞んで活きてないし、キャラが耳島に負けているという(笑)。

耳島をメインとした話が欲しかったし、ヒロインと部長以外のミス研メンバーの影が薄いのも残念。個人的にネタのヒット率は低く、瞬間的面白さでは、佐藤隆太繋がやってるビールのCMの走る長友ネタ以下のものが多かった。

撮らないで下さい!!グラビアアイドル裏物語

何を血迷ったか、全くアイドルに詳しくないのに最後まで観てしまった。フェイクドキュメント形式で、本人が本人を演じていて、アイドルユニットオーディションの密着取材を通じ、アイドルの本質?に迫る内容。

それぞれの個性は出ているものの、展開がパターン化してしまっている部分もあり、アイドルという職業についての言及が似たり寄ったりなところはあったけど、業界ものとして興味深く観れた。あと、全員の演技がとても自然で演じてる感がほとんどなかったのには感心した。台本がない部分があり、本音を語らせていたりするところもあるのだろうか。

一つ引っかかったのは、グラビアアイドルの頂点を目指す的なこと言ってた人がいた点で、何がどうなればトップに立ったといえるのか全然分からないし、昔ならまだしも今そんなこと考える人いるのかなと疑問に思った。

輪るピングドラム 最終回によせて

東海地方では明日が最終回の『輪るピングドラム』。僕の関心は、高倉家や苹果がどうなるかにはほとんどなく、眞悧やKIGAがどう処理、昇華されるのか。世界観がある程度納得できる形で示されるかにあります。

説明するまでもないでしょうが、この作品はオウムや酒鬼薔薇聖斗を意識させる設定、表現が出てきます。しかし、これらの現実の事件が作品において直接的に重要な意味をなすわけではなく、90年代後半を表す象徴として使われているものと思われます。眞悧が言う「呪い」というのは、この時代が現代に残している(かもしれない)呪いでもあり、そこにはエヴァも含まれているでしょうし、自身の作品「ウテナ」も含まれており、もっと言えば眞悧は幾原監督自身の一面が投影されているのでは。

そんな時代の呪縛をどう解放するかというところに注目したい、のですが、ここまでの話でほとんどテーゼが開示されており、うっかり見てしまった最終回のタイトルがド直球すぎて大体予想出来てしまいますし、それはそこまで新しいものではないのではないかという思いもあります。